TokuteiJuku’s blog

特定社労士試験の勉強と受験

特定社労士の受験を薦める理由

まあ皆さん聞いてくださいよ!(人生幸朗調で)

 社会保険労務士の約1/3が特定社労士です。しかし、毎年、社労士試験の合格者数が2,000人超で、特定社労士試験の合格者数が500人前後という状況が続くと、特定社労士の割合は限りなく1/4に近づいていくことは、容易に想像がつくものと思われます。

 では、なぜ、特定社労士試験の受験者数が1,000人前後で定着して漸減傾向にあるのか?

 1つ目の理由は、単に「特定社労士としての個別労働紛争解決手続代理業務の仕事がほとんどないから」資格を取得してもメリットがないと考えている一般社労士が多いからと言えます。確かに、調停やあっせんの代理業務の件数は少ないので、この仕事をばりばりやっていますという人に会ったことはありません。でも、特定社労士試験が易しくて、短時間の要領の良い受験勉強で合格できるなら、資格を取得して箔を付けるメリットがあるのではないのか?という疑問が湧きます。さらに、もし過半数の社労士が特定社労士(多数派)になったら、残りの一般社労士(少数派)は、社労士の2重構造が世間で明らかになって、社会保険諸法令に関する事務の仕事であっても、特定社労士を世間が求めるようになるのではないかとも考えます。

 私のまったく個人的な見解ですが、もう一つ重要な理由があるのだと思います。それは、一般社労士試験と特定社労士試験の対象分野(勉強の内容)と出題(解答)形式がかけ離れていて、前者に合格した一般社労士の大半が後者の試験には(ちょっとやそっとの受験勉強では)太刀打ちできないという現実があると思います。したがって、一回(二回)受験して「もうダメだ」と諦める人や、そもそも特定社労士試験を怖がって受験しない人がたくさんいるから、上述の直接的なメリットの不十分さと相俟って、特定社労士試験の受験者数も合格者数も漸減傾向が続いているのだろうなと考えています。

 現在の一般社労士の仕事でも十分に社会の役に立って、報酬も得られているのだから、あえてリスクを取って特定社労士試験を受験して失敗して恥を掻くよりも、「このままでいいや」と考える人、つまり、「現状に満足してしまって挑戦しない人」が多いのだろうなと推測しています。それも常識的な考え方ではあります。

 しかし、想像してみてください。使用者や労働者が抱えるサービス残業、セクハラ・パワハラ、過労死・過労自死などの問題の解決とその予防策の構築などの相談に乗ることも多い社会保険労務士が、今の社会保険労務士試験に受かっただけで、憲法民法、民訴法、刑法などの法律知識やその運用能力のない、聞きかじり知識しか無い素人だったとしたら、使用者も労働者も恐ろしくて相談に来ませんよね。そう言う意味で、現在、社会保険労務士は労働問題の専門家というのは、少なくとも一般社労士については、世間の側の錯覚ではないかと思います。もちろん、一般社労士でも十分にスキルを備えた人もいるでしょうし、特定社労士試験に合格したレベルで十分とは思いませんが、この程度の低いハードルを超えてこなければ、話にならないだろうというのが私の考え方です(過激な表現で失礼します。)。併せて、特定社労士試験第2問(倫理事例問題)で、弁護士法違反の非弁活動の禁止や利益相反取引概念に関する知識を得るという機会を持たない一般社労士が、以前記事に書いたように労働争議に巻き込まれたりして、危ないなあ!とも感じています。

 つまり、労働相談に応じる際の最低限の能力の保証が特定社労士試験の合格だから、それぐらいは合格してから、労働相談の仕事をやってください、だから、皆さん特定社労士試験を受験して合格してくださいというのが、私が受験を薦める理由です。毎年、2,000人前後が受験して1,000人超が合格する日が来ることを希望しています。

 問題は、憲法民法などの法律の勉強をしたことのない人たちに、働きながら試験勉強させるなら、能力担保研修の申込をする6月から半年ぐらいかけて勉強するように注意喚起するようになっていないことと、適切な教材が用意されていないことだろうなと思う、今日、この頃です。

 これは、あくまで、私の個人的な見解です。責任者は呼ばなくて結構です。どこかから「この泥亀!」と聞こえてきそうですから、先に謝っておきます。「ゴメンチャイ!」

 

 参考までに、こんな話もあります。昔、知り合いの親子弁護士で法律事務所を営む息子の方の弁護士から聞いた話です。彼は、司法修習後、東京の法律事務所に修行(イソ弁)に行きました。その事務所に10年勤めてお礼奉公をしてから、大阪に戻ってお父さんの事務所を継いだ孝行息子の話、ではありません。彼が東京で勤めた事務所のボス弁は、新人には3年間みっちり訴訟ばかりを担当させるという方針だったそうです。ある日、彼がボス弁に尋ねたそうです。「どうして、もっと易しい契約書の作成やチェックや交渉の業務ではなく、難しい訴訟ばかり担当するのですか?」と。ボス弁は、「紛争を予防するための契約書の作成や契約交渉というのは、紛争がどうして発生して、どのように解決されるのかと言うことを、直に勉強した人間にしかさせられない。聞きかじりの知識で、安易に契約書を書いたり契約交渉をすると、後日、思わぬ失敗が見つかって、紛争の種になることがあるから、新人には訴訟をみっちり勉強してもらうことにしてる。」と答えたそうです。

 私の考え方は、このボス弁の考え方に近いと思います。もちろん、特定社労士の受験勉強が、弁護士が訴訟実務を経験することとは比較にならないぐらい易しいことではあるとは思いますが・・・。

 さて、4日から仕事です。4日が仕事始めの方も多いと思います。私は、なぜか、今年は、最初の2週間は、スケジュールが詰まっています。老体には、大変な過重労働ですです。「自由業には、働き方改革はないのか?責任者呼んで来い!」(泣)