TokuteiJuku’s blog

特定社労士試験の勉強と受験

第2回試験問題の解説(その3)

 第1問の解説だけで(その3)まで来ました。今回も量が多いです。昨年の5月15日、同19日、同22日の記事を修正して引用します。分らなくなったら、基本書で調べたり、前の記事を遡って読んだりして、しっかり理解してください。

 前回も書きましたが、第1問の勉強は、格闘技の訓練ぐらいに思って、頭を切り換えて臨んでください。

 

第2回第1問小問(3)の解き方************************

 

 小問(3)では、解雇をした使用者であるY社の立場に立って、Y社の代理人として、Xについての①新賃金・新人事制度等の企画導入の件、②通勤手当の件の2つが、Y社就業規則「勤務態度、業務能力、勤務成績等が劣悪で改善なく、従業員として不適格なとき」という規定に基づく解雇事由として妥当(適切)ですか?と聞かれているのだろうと思いますが、実際の問題文では「解雇事由としてどのように考えますか」となっていて、何か、微妙に回答の幅があるように読めるのは、どうもスッキリしていません。

さて、小問(3)の出題の趣旨および配点は、次のとおりです。

 〔出題の趣旨〕 Y社の代理人の立場に立って、本件設例における解雇事由に関し、

        ①新賃金・新人事制度等の企画導入の件、②通勤手当の件について、

        Xに対する解雇事由として、この各事実に関して就業規則に定める

        解雇事由との関係でそれぞれどのように取り扱うべきかについて、

        Y社の代理人としての視点からの理解及び主張すべき内容に関して

        問うもの。

〔配点〕20点(①、②について各10点)

 下線は私が引きました。「どのように取り扱うべきか」とは、また、曖昧な物言いで、どういう風に回答して欲しいのかがよく分りません。こういう事実があって、解雇事由に当てはまる、または当てはまらない、と書けば回答になるのかなと考えて話を進めます。

 Y社の代理人としては、①②ともに就業規則に定める解雇事由「勤務態度、業務能力、勤務成績等が劣悪で改善なく、従業員として不適格なとき」のどこかに該当して、解雇は適法と書くことを求められていると思います(よっぽどコジツケの屁理屈でない限り)ので、そのように理由と結論を簡潔に書くと、次のようになります。

① 新賃金・新人事制度の企画導入に失敗し、コンサルタント会社に外部委託して完成させて実施が遅れたという事実は、そのような企画導入をする能力があると見込んで幹部社員としての部長職として好待遇で中途採用してきたXとの雇用契約の本旨に反し「業務能力が劣悪」か「勤務成績等が劣悪」のいずれかまたは両方に該当し、結果として「従業員として不適格なとき」にも該当することになるので、解雇は有効である。

② Xが入社以来1年半という長期にわたって、居住地を偽ることによって通勤手当を実際よりも高く請求することで、毎月1万5千円、合計27万円の金員をY社から不正に取得していたことは、雇用契約上の信義則および善管注意義務に反するとともに、詐欺にも該当するので「勤務態度が劣悪で改善なく」「従業員として不適格なとき」に該当し、解雇は有効である。

 ここで、会社への不正請求ならば詐欺(法律学小辞典5参照)、会社の金銭の不正使用なら横領(同辞典参照)となる訳ですが、本問は、懲戒を問う問題ではないので、懲戒事由等については、管野本P700-718「第2款 懲戒」を読んで、知識を広げておいてください。

 

第2回第1問小問(4)の解き方************************

 

 小問(4)は、Xの代理人として、本件事案について紛争の解決を図るとした場合、どのような解決が妥当か?と問われています。出題の趣旨は次のとおりです。

 

〔出題の趣旨〕  本設例についてXの代理人である特定社会保険労務士としてXの

        立場で本件紛争の解決を図るとした場合、実際上どのような方向に

        向けて具体的に解決方向の努力することが妥当と考えられるかにつ

        いて、その解決策と留意事項を問うもの。

 私が下線を引いた箇所が回答のポイントとなる訳ですが、話の落としどころを探るには、当然、この紛争の勝ち負け(どちらがどの程度有利か?)の判断が要ります。しかし、本問では、そこは問われていません。一方、最近の試験では、ここが問われます。

例えば、16回(令和2年度)第1問小問(4)の出題の趣旨は次のように書かれています。

〔出題の趣旨〕 本件事案について、双方の主張事実や本件事案の内容等を踏まえて

    本件試用期間満了による本採用拒否の解雇の効力について考察し、その法的判   

    の見通し・内容について250字以内での記載を求める出題である。

     解答にあたっては、本件が試用期間中の解雇であることから、試用期間満了 

    時の解雇は通常解雇とは異なるのでその法的意義内容に言及し、その上でX、

    Y社の主張事実の内容、Xの従業員としての不適格性の立証はY社が行うべき

    であることから、本件主張関係を考察して、客観的合理性と社会通念上の相当  

    性についての判断考察内容の記載を求めるものである。

 下線は私が引きました。次に同小問(5)の出題の趣旨を載せます。

〔出題の趣旨〕 本件事案について、Xの代理人である特定社会保険労務士として、

   本件「あっせん手続」において、小問(4)の「法的判断の見通し・内容」を踏

   まえ、Y社側の主張事実も考慮し、妥当な現実的解決を図るとした場合、どのよ

   うな内容の提案をするかについて250字以内で記載を求める出題である。

   本問の解答にあたっては、小問(4)で考察した法的判断をもとにして和解解

   決を図るとした場合にどのような提案が、Xとして双方の主張や事実関係からみ

   て現実的で妥当なものであるかについて、Xの立場として考えられる提案内容の

   記載を求めるものである。

 16回第1問では、次の小問(5)で話の落としどころを書かせる前に、申請者と相手方の主張事実の内容を検討して、最終的な法的判断の見通しとその内容を書かせるというワン・ステップのための小問を入れています。

 何を言いたかったかと言うと、第2回第1問小問(4)では、直接書くことは要求されていませんが、やはり、話の落としどころを書く前提として、最終的な法的判断の見通しが必要だったのではないか?それがあってこそのXの代理人としての(Y社も受け入れやすい)妥当な解決策の提案ではないか?と考えるわけです。

 本第1問は、XはY社が期待したほど(銀行員を見込んで好待遇の部長職で採用)の成果を上げられなかったのだが、Y社も新人事制度等構築のためのXに対する指導・支援が不十分だったし、Xを雇った目的として将来の取締役候補というのもあってこれに失格と言うほどのこともなかった(通勤手当の不正請求の件もXによる反論の余地はある)のだから、百歩譲って、仮に客観的に合理的な理由があったと認めたとしても、解雇することが社会通念上相当とまでは言えないと判断し、最終的にはY社による解雇権濫用で、解雇は無効になるのではないかというのが、私の判断です。

 そうすると、話の落としどころとしては、①Y社への復職、②解雇とされていた期間に対応する賃金およびボーナスの支払をXが求めることができるとしても、Y社が被った金銭に限らない損害およびXのY社内における今後の立ち位置等を考えると、③Xの職種の変更、地位の降格、賃金の減額等によって、Xも譲歩したという形を残すことが必要であると考えます。次の小問(5)の問題文が、この落としどころを暗示しているのかなとは思いますが、小問(4)の回答に「Xを課長に降格して年俸を8百万円から5百万円に減額することが相当」とまで書いてしまうと、「自分の頭で考えたのか?」と採点者(出題者)に疑われそうなので、そこは自分の言葉で書くように心掛けてください。

 

 余談ですが、昔(バブル前まで)は、新卒で就職すると中高年の終身雇用の女子社員がたくさん会社におられて(寿退社しなかった人たち)、各職場でお局様と呼ばれていたり、その上に春日局様みたいな人が君臨していて、会長・社長・役員にも睨みをきかせていた会社がたくさんありました。新入社員としては、少なくともこのお局様ネットワークに嫌われないようにするのが一苦労でした。また、各職場に古手のたたき上げの人たち(当然、正社員の終身雇用)がいて、部長や課長も彼らに頭があがらないというのもあり、新入社員はいつも鬼軍曹に鍛えられて一人前に育っていきました(一部、反発する新入社員もいました。))。パワハラは当たり前でした(怒鳴る、説教する、書類や鉛筆を投げる、机をたたくなど)が、会長→社長→役員→部長→課長→係長→平社員と順番に怒られるので、(誰かが特定の誰かをいじめるようなことではなく)ある意味、相身互いでした(よく、上から叱られてションボリしている管理職を見ました。)。

 高度成長期の日本映画では、東宝の、森繁久弥が社長役を演じた「社長シリーズ」というのが流行って、毎日、接待やら交際費での飲食、個室に社用車を用意される役得てんこ盛りの重役にあこがれました。一方、東宝は、植木等主演のサラリーマンシリーズという映画も流行らせて、下から頑張れば、いつかは俺も重役になって役得を満喫するぞと言ってみたり、出世しなくてもそれなりに気楽で楽しいサラリーマン生活と言ってみたりもして、今、考えると牧歌的でした。今は、大企業の役員(重役という言葉は私語?)になっても、メチャメチャ働かされて、「役損だ!」と言っていた人もいます。

 バブル経済からその崩壊後にかけては、松竹の「釣りバカ日誌」が日本の企業社会を斜めから見て皮肉ってましたね。釣りバカかつ家族思いサラリーマン(高度成長期のエコノミックアニマルとは正反対)の浜ちゃんが、(人生至る所に青山ありで)幸せそうにサラリーマン生活を満喫していた一方、鈴木建設社長のスーさんは、会社ではいつも機嫌が悪くて、ワンマン社長のパワハラ親父丸出しなのに、(自社の平社員の)浜ちゃん家族との交流+(仕事人間が)釣りという趣味の発見で人間味を取り戻すという設定は、ちょっとあり得ない話でしたが、少し癒やされました。

昔が良かったとは言いません(懐かしくはあります。)。確かに、現代の方が働くことは、より大変(難しい)ですが、昔も大変だった(よく生き残った)と思う、今日、この頃です(爺の呟き、でした。)。

 

第2回第1問小問(5)の解き方************************

 

 小問(5)は、Y社がXを解雇の代わりに、課長に降格して、年俸500万円程度で雇用を維持するとした場合に、Xの同意が要るか?と(結論とその理由を)問うています。Xにとっては、解雇されるよりはマシですが、部長から課長に格下げされて、年俸も800万円から500万円に減額される訳ですから、そんなことを一方的にされたら困ると言うことは明らかです。ここで、ちょっと気になるのは、出題の趣旨の(私が引いた)下線部分です。

〔出題の趣旨〕 本設例について、Y社としてXを解雇するのではなく経営企画部

       長から課長に降格して、課長としての年俸で雇用を維持するとした

       場合のXの同意の有無について、地位等を特定した雇用に関し解雇

       回避措置、不利益変更等についての総合的な法的理解を問うもの。

 本当は解雇したいのだけれど、解雇権濫用と言われるのが嫌だから、(解雇回避措置として)期待した成果の未達、部長としての能力不足等を理由として、降格・賃金減額で妥協するか、とY社からXに提案してみたら(解雇回避措置だから)Xの同意なしに認められるものか?とY社の頭の良い人(または、顧問社労士)が考えたという設定でしょうか。

 当時のベテラン社労士なら、幅広い知識と経験に基づいて、「使用者による労働条件の一方的な引き下げは労働条件の不利益変更だから出来ないし、解雇回避の努力義務があるのは整理解雇のときだけだから、労働者側の成果や能力を問題にして普通解雇をすることを回避する代替措置だからといって、労働条件の不利益変更となる一方的な引き下げが認められる訳はない。よって、申請者Xの同意は要る。」程度はサラサラと書けて、一応の合格点はもらえたのかな?と推測します。例えば、「Xが地位特定・職務特定の雇用契約をY社と締結していて、それが未達だったら課長への降格があると規定されていたら同意なしにできる」ぐらいが、付加出来たら加点されたかもしれません。

 以上の説明でも、一応の回答と理屈にはなっている訳ですが、「総合的な法的理解を問う」と出題の趣旨に書かれているので、もう少し掘り下げて検討してみます。

老婆心ながら付け加えておきますと、労働契約法の制定は平成19年12月5日、施行は

平成20年3月1日ですから、同法第8条(労働契約の内容の変更)「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」を使って、この反対解釈から「同意がなければ変更できない。」という根拠付けをして回答を導くと言う手法は、(平成18年の第2回当時)できなかったということを記憶しておいてください(今なら、同法8条に触れないと減点でしょう。)。

 第2回第1問に関する小問(4)までの検討は、解雇権濫用の論点でしたが、ここでは、「使用者による一方的な①賃金の減額を伴う②降格は可能か?」という論点が問われています。しかも、「これが解雇回避措置だったら、使用者側の③正当性の補強材料になるのか?」という論点を関連させています。ここで触れておきますが、「使用者による一方的な①賃金の減額を伴う②降格は可能か?」が違法で出来ないというのなら、当然、解雇回避措置としてこれをY社がXに対して、解雇の前に提案(強制)すると言うことは出来なくなるので、正当性の補強材料となることはないとなりますので、①②の検討の結果、③は検討するに値しなくなります。

 例えば、部長や課長という呼称がポジション(管理職としての職制)を表し、部長職が1級、次長職が2級、課長職が3級というタイトル(職能資格上の能力の格付け)を表するならば、前者の部長→課長は使用者の人事権の範囲内だし、後者の部長職→課長職は、(能力が下がったという曖昧な理由に基づく)賃金という労働条件の不利益変更となって労働者の同意が要るとかいう分析的議論をここでしておきたいので、基本書を読んで少し幅広に勉強してください。労働契約法8条(労働契約の内容の変更)・9条(就業規則による労働契約の内容の変更)だけでなく、労働協約による変更の場合も含めて、労働条件の不利益変更の論点についても、併せて勉強してください(昨年の能力担保研修のビデオで、石嵜信憲弁護士が手厚く説明していました。)。

 それぞれの論点について、管野本P427-441「4.賃金制度をめぐる諸問題」に賃金の面から、P721-727「第2款 昇進・昇格・降格」に人事制度の面から書かれています。労働法学者は、研究対象が大企業と労働組合制度に興味関心が向いているのかなと読んでいて感じました。分析・検討は精緻です。この際、解雇に次ぐ重要論点である労働条件(賃金、昇格・降格等)の不利益変更について、勉強してください。

 以上、やっと、第2回第1問の解説が全部終わりました。

 

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 次回(その4)で、第2回第2問(倫理事例問題)を1回の記事で書き上げる予定です。

第2回試験問題の解説(その2)

 今回は、小問(2)の解き方を解説します。昨年の5月5日、同9日、同12日の記事を修正して載せますが、かなりボリュームがあります。

 

第2回第1問小問(2)の解き方(その1)*******************

 

小問(2)の問題文

 Xの立場に立って、Xの代理人としてY社の行った本件解雇が、解雇権の濫用で無効であると主張する場合に、これを基礎づける具体的主張事実の要旨を解答用紙第2欄に箇条書き(例えば、「①63歳まで雇用を保障する特約のあったこと。」等の要領)で記載しなさい。

 

 〔出題の趣旨〕 Xの代理人である特定社会保険労務士として、Y社に対して本件

       解雇が権利濫用で無効であると主張する場合の請求原因となる具体

       的事実の主張(権利濫用を根拠づける事実)を箇条書きでの記載を

       求めるもの。当事者の言い分の中から要件事実を的確に具体的項目

       として把握しているか、それを主張事実としてまとめられるかを問

       うもの。

〔配点〕20点

(注)下線は私が引きました。

 

 次の「法的三段論法」の大前提と小前提を検討する出題です。

大前提

要件→効果(法命題)

小前提

事実→要件(事実へのあてはめ)

結論

事実→効果(具体的な価値判断)

 

 解雇無効を争う場合の共通する公式が、安西愈著「トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識【十四訂】」中央経済社2013年9月15日発行(以下「安西本」と略称します。時々引用することがあります。)P965に「第18-2 有効な解雇の図式」として示されています。これを少し加工して次に載せます。この式に従って、「就業規則該当事由」から「合理的な理由と社会通念上の相当性」まで検討して、全部満たしたら解雇有効となる訳です(どこかで引っかかると無効)が、回答としては、回答欄のスペースとの関係で検討過程の全部を書くことができないときは、最初の方の条件を満たしていることを省略することもあり得るので、答案構成が重要になります。

 

有効な解雇

原則として就業規則該当の事由(政府見解や判例は例示列挙説・懲戒解雇は限定列挙)

就業規則に定める解雇手続の履行(社内規定等に定めがある場合)

労基法の解雇予告手続の履行(予告除外認定を含む)

法律上の解雇禁止に不該当(法定の禁止)

解雇を相当とする理由(総合的な判断)(・客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性)

 

(注)最後の要素は、最高裁判例が、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」と述べて、解雇権濫用法理として確立しています(しつこいようですが、暗記しておくべきです。)。

 

 この解雇権濫用法理がとても重要なので、ここでしっかり勉強するために、菅野本 P784-793 (1)解雇権濫用法理の明文化、(2)解雇の合理的理由・概説、(4)勤務成績不良者に対する解雇を、よく読んでください。

 

第2回第1問小問(2)の解き方(その2)*******************

 

 前回持ち越した「解雇権濫用法理」ですが、解雇の論点の根本にかかわるので、ここで一度整理をすることにしました。

 例えば、第16回(令和2年度)特定社労士試験第1問小問(4)の出題の趣旨は次のように書かれています。

 

〔出題の趣旨〕 本件事案について、双方の主張事実や本件事案の内容等を踏まえて本件       試用期間満了による本採用拒否の解雇の効力について考察し、その法的判断の見通し・内容について250字以内での記載を求める出題である。解答にあたっては、本件が試用期間中の解雇であることから、試用期間満了時の解雇は通常解雇とは異なるのでその法的意義内容に言及し、その上でX、Y社の主張事実の内容、Xの従業員としての不適格性の立証はY社が行うべきであることから、本件主張関係を考察して、客観的合理性と社会通念上の相当性についての判断考察内容の記載を求めるものである。

 

 私が下線を引いた箇所は、最高裁判所日本食塩製造事件―最二小判昭50.4.25で、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」と述べた、解雇権濫用法理の2つの要素を指しています。

 何が言いたかったかと言うと、第16回第1問は、試用期間満了時の解雇の論点が正面の論点ではありますが、その底流には解雇権濫用法理が流れているよと出題者が示唆してくれていると言うことです。逆に言うと、(過去問では)様々な解雇の場面があって、場面ごとの細分化された論点の要件・効果の当てはめが適切に思い浮かばなくても、根底には解雇権濫用法理が流れているので、その理解があれば、それを使って答えにたどり着けるので、そこをしっかり理解して習得することが、大切(基本中の基本)ではないのか(私は考えている)と言うことです。蛇足ながら、平成15年の労働基準法改正で同法104条に明文化され、平成19年に成立した労働契約法16条がこれを受け継いでいることと、その後最高裁が認めた(有期雇用契約の)雇止め法理とこれを明文化した労働契約法19条があることは、皆さんご存じのとおりです。

 管野本P784には、「労基法の制定・施行後しばらくの間は、解雇は正当事由が必要であるとの説が唱えられていたが、これは民法上の解雇の自由(627条1項)を基礎とする現行法においては無理があるので、やがて権利濫用の法理(民法1条3項)を応用して、実質的に同一の帰結をもたらす解雇権濫用法理が多数の裁判例の積み重ねによって確立された。」と記載されています。ここでは、解雇権濫用法理は民法の権利濫用の条文が出発点であったと言うことを、覚えておいてください。

 さて、①「客観的に合理的な理由」とは何か?と②「社会通念上相当として認められない場合」とは何か?についてです。

 安西本P973-975には、「『客観的に合理的な理由を欠く場合』とは、解雇に値する事由を欠く場合ということで、その有無については、次の①真実性、②客観性、③解雇規範(基準)該当性から判断される。・・・<中略>・・・。次に、これに該当する事由としては、一般企業においては、次のようなものが考えられる。①労務提供の不能、困難、不安定 ②労働能力、技術、知識等の著しい欠如 ③労務の著しい不適格(業務上の著しい不適格、協調性の欠如、不安全行動の常習、職場不適応 ④~⑩<省略>)」と記載されています。

 安西本P975には、「これは、『解雇理由が客観的かつ合理的なものであるとしても、さらに社会通念からみて労働者を企業から排除するに値するほどのものとは評価し得ない場合をいう』ということである。」と記載されています(その後、高知放送局アナウンサー事件最高裁判例を用いて具体的に説明されています。)。私が考えるには、客観的に合理的な理由はあるが、諸般の事情(前例、周囲の状況、本人の事情等)を考慮すると、解雇までするのは当該労働者にとって酷だろうと思われる場合だということです。

 ここでもう1つポイントがあります。管野本P786には、「解雇権濫用の主張立証責任」という箇所があり、①「客観的に合理的な理由」があると使用者が主張・立証するのか、それとも、ないと労働者が主張・立証するのか?②「社会通念上相当として認められない場合」であると労働者が主張・立証するのか、それとも認められると使用者が主張・立証するのか?について書かれています。これまでの特定社労士試験では、挙証責任の分配の関係で勝敗が分かれるので、その勝敗の行方を予想することが困難になるまでの出題はなされていませんが、(勉強になるので)管野本をお持ちの方は、じっくり読んでおかれることをお勧めします。

 原則論は、申請人が主張・立証して、相手方が反論する(突き崩す)という形になると思いますが、場合によっては両者が主張・立証し合うということもあります。

 

第2回第1問小問(2)の解き方(その3)*******************

 

 試験本番では、時間が足りなくなるのでここまで掘り下げて検討したくても出来ませんが、今は、勉強のためなので、以下、詳しく分析していきます。

 まずは、出題の趣旨を再掲します(下線は私が引きました。)。

 〔出題の趣旨〕 Xの代理人である特定社会保険労務士として、Y社に対して本件

       解雇が権利濫用で無効であると主張する場合の請求原因となる具体

       的事実の主張(権利濫用を根拠づける事実)を箇条書きでの記載を

       求めるもの。当事者の言い分の中から要件事実を的確に具体的項目

       として把握しているか、それを主張事実としてまとめられるかを問

       うもの。

 

有効な解雇

=原則として就業規則該当の事由(政府見解や判例は例示列挙説・懲戒解雇は限定列挙)

就業規則に定める解雇手続の履行(社内規定等に定めがある場合)

労基法の解雇予告手続の履行(予告除外認定を含む)

+法律上の解雇禁止に不該当(法定の禁止)

+解雇を相当とする理由(総合的な判断)(・客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性)

 

 そもそも、あっせんや調停では、申請人(例えば、解雇された労働者)が、相手方(例えば、解雇した使用者)に対して、申請書で「その解雇は無効です。なぜなら、こういう事実があって、それが解雇権濫用の要件に当てはまるからです」と主張し、相手方が答弁書で「申請書に記載された事実は虚偽ですとか、申請人の誤解ですと言って、だから解雇権の濫用はありません」と反論します。

 そうすると、上記の有効な解雇の式に当てはめて分析して、本件解雇は無効であると主張・立証する責任を負うのは、一義的には解雇された労働者(申請人)Xということになります。これを受けて、使用者(相手方)Y社は、答弁書で、Xの申請書に記載された主張・立証を攻撃する(突き崩す)反論(といいつつ自らの行為は正しいというのですが。)をすることになります。本問では、XがY社の弱点の何処を突くべきかが問われています(混乱しないようによく考えてください。)。

 

 それでは、原則的な解き方として、5つの枠で囲った要素について順番に見ていきましょう(この検討をそのまま答案に書かされることは、まずありません。)。

① 就業規則の該当事由(Y社の社長の言い分)

  就業規則の「勤務態度、業務能力、勤務成績等が劣悪で改善なく、従業員として不  適格なとき」との解雇事由の定めにより、解雇しました。・・・事実の評価の問題ですが外形的には満たします

② 就業規則に定める解雇手続の履行(根拠なし)

  懲戒解雇なら懲戒事由、懲罰の種類、本人の弁明等の手続等が定められているはずであるが、本件は普通解雇であり、特段の手続が必要であると就業規則に定められているとの情報提供もないので、この要素はスキップできると判断します。

③ 解雇予告手続の履行(Y社の社長の言い分)

  解雇予告手当を支払い解雇しました。・・・30日前の解雇予告か賃金30日分の解雇予告手当の支払が必要で、後者が履行されている。・・・この要素は満たします

④ 法律上の解雇禁止事由に不該当(根拠なし)

不当労働行為となる解雇の禁止(労組法7条)、業務上の負傷疾病による休業、産前産後休業中およびその後の30日の解雇禁止(労基法19条)、国籍、信条等を理由とする解雇の禁止(労基法3条)、監督機関等行政機関に対する申告・申出を理由とする解雇の禁止(労基法104条、安衛法97条等)、性別を理由とする解雇の禁止(均等法6条4号)、女性の婚姻、妊娠、出産を退職理由と予定した定めの禁止(均等法9条1項)、婚姻、妊娠、出産、産休、育児・介護及び育児、介護関連措置の理由の解雇の禁止(均等法9条2項3号、育児・介護法10条・16条等)、妊娠中及び出産後1年以内の女性の解雇禁止(均等法9条4項)、労基法等の手続保障についての不同意や過半数代表者への不利益取扱いの解雇禁止(労基法38条の4等)、公益通報をしたことを理由とする解雇の禁止(公益通報者保護法3条)などに該当する事実は示されていない。・・・本問では不該当と判断します(過去問でこの点を問われたことはありませんが、将来、該当する場合が問題文に登場する可能性があるので、主な該当事由を覚えておく必要があります。)。

 

 ここまでで、Y社の主張は、一応、通ると考えます。すると次の⑤が問題になります。

 

⑤ 解雇を相当とする理由

 ア 客観的に合理的な理由が存在するか?

   相手方Y社の立場からは、①新しい賃金制度・人事制度等の企画導入およびその 運営実施を担当職務として、社長直属の経営企画部長として経営幹部の地位で中途採用し、②初年度年俸は800万円ではあったが、2年目からは他の部長と同額の850万円とした。①と②の条件で期待して採用したのに、③定められた期日までに満足な人事制度の提案がなされず、やむなく外部のコンサルタント会社に委託して新人事制度を導入・運用した、④経営企画部長としての営業活動が不適切で取引先の不興を買い、成績が上がらなかった、⑤社外の人に対し、社長やY社を批判した、⑥通勤手当の不正受給があった、との事実が主張されています。①と②はXとの間で争いのない事実と考えられますから、③~⑤をどう評価するか(悪さの程度)が、XとY社で見解が分かれています。

 申請人Xの立場からは、相手方Y社の主張する事実が(a) 虚偽である、(b) Y社に都合の良い主観的評価である、(c) 解雇規範(基準)からはずれる、の3点を主張・立証することになりますが、(a)と(b)が満たされれば(c)はY社の就業規則の解雇事由に該当して満たされることになるので、(a)か(b)を主張・立証することが必要です。

 XによるY社の主張する③④⑤⑥への反論は、③Xの経験したことのないY社内部の問題からうまく新賃金制度・人事制度等の提案をできなかったが努力して案を作って社長に提案したにもかかわらず、否定されたうえに、適切な指導も支援も受けられず、最後にはXを無視して外部委託してしまった、④経営企画部長としての営業活動は銀行での経験を活かした経営アドバイスなどで適切な方法・内容であった、⑤自分が疎んじられていたのでY社の将来を心配して取引先に愚痴を言ったことはあるが、社長や会社を批判したことはなかった、⑥通勤手当は不正受給ではなくY社における裁量の範囲内のことであり、実態を知っていた経理部長から注意を受けたことはなかった。

 以上の検討から、Y社が主張する③④⑤⑥は、真実性と客観性において、疑問が残る状態に置かれている(つまりY社の主張・立証は不十分)と普通なら判断します。しかし、後述しますが、XのY社における立場が、普通の正社員労働者と違うという点から、事実の評価の基準が変わって、Xにとって厳しくなると、Y社の主張(この試験では証拠の提出など立証活動は示されない。)が認められ易くなります。

イ 社会通念上相当性と認められるか?

   申請人Xの立場からは、仮に上記アが満たされたとしても、具体的状況等諸般の事情を考慮して、申請人Xが解雇に値するほどの悪質な(または劣った)労働者ではないと主張・立証することで、解雇を無効にすることができます。Xが入社したときの条件・待遇は、Y社の主張する①新しい賃金制度・人事制度等の企画導入およびその運営実施を担当職務として、社長直属の経営企画部長として経営幹部の地位で中途採用した、②初年度年俸は800万円ではあったが、2年目からは他の部長と同額の850万円とした(ここで少し引っかかるのは、1年目に他の部長より50万円安かった点です。)、これらに加えて、Xの言い分にある「将来は銀行の経歴を生かして経営に関与する取締役にといわれ」という事実から、Xは単なる新人事制度等構築のための短期雇用の専門職ではなくY社の経営幹部としても期待され長期雇用が約束されていたことが見て取れます。これらに追加でXの事情をあげるなら、40歳代か50歳代の中年男性が銀行を退職して転職してきたのにY社に解雇されて、次の転職先を探すことは難しいこと、XがY社に残りたいと希望していること、初年度の年俸は他の部長より50万円安くY社に馴染むための期間中だから最初から高い成果目標を課していなかったととれること、Y社としてXの受け入れ・能力の発揮へのサポートが不十分であることなどから、仮に、上記アの検討結果がY社側有利であったとしても、そう簡単には社会通念上相当とは言えないと思われます。つまり、どちらを勝たせるかは、中々難しい(悩ましい)状況になりました。

 

 ここで、上記⑤ア・イをどのように評価するかを考えるために、以前書いた、要件とそのあてはめに際しての注意点を、私のノートから再掲します。もうお分かりとは思いますが、「(3)職種や地位を特定して中途採用した労働者の能力不足による解雇」と「(4)地位特定者の解雇を補強する条件」が、ここでのポイントになります。

 

(1)勤務態度不良による解雇

① 労働者の勤務態度不良は、労務提供義務の不完全履行であり解雇理由となり得るが、懲戒解雇となる事案は少なく、普通解雇とされる場合が多い。

② 勤務態度の不良は、一つ一つの出来事は些細なものであっても、このような事情が恒常的に繰り返されると、勤務態度の不良が重大であると判断され、しかも、使用者側の再三再四にわたる注意・指導にもかかわらず労働者が一向に態度を改めないと、懲戒解雇が認められる場合がある。

③ 勤務態度不良による解雇の妥当性は、問題行動の反復・継続性、使用者側の注意・指導の有無などがその判断要素となる。

(2)職務能力不足による解雇(次の要素が必要)

① 就業規則に解雇事由の具体的記載があって、それに該当すること。

② 単に能力が他の従業員に比べて劣っているというのでは足りない。

③ その程度が著しいため改善の見込みがないと認められること。

④ 会社の統制上又は営業面で看過できないほど広範囲かつ深刻なものであること。

⑤ 当該従業員を他の業務を配置転換するなどの方法によっても回避しがたい状況に至っていること。

(3)職種や地位を特定して中途採用した労働者の能力不足による解雇

① 地位特定者とは、会社が特定の仕事が出来ることを前提に、それを期待して賃金や権限を優遇して雇用された従業員である。

② したがって、このような地位を特定された従業員が、契約の本旨に沿った仕事ができない以上、契約の解除、つまり解雇されても致し方ないのである。

(4)地位特定者の解雇を補強する条件

① 裁判で会社側は、労働者の能力不足を理由とする解雇の正当性を主張するために、雇用契約書の内容と、当該労働者の能力不足が債務の本旨に沿わないことを決定づける客観的な事実を、証拠として示さなければならない。

② 会社としては、このような解雇もあり得るとの前提で契約書を作成する必要がある。つまり、これが示せないと話にならない。口頭では不十分だが、答案で事実を列挙するときに書面契約書の記載等が足りなければ、口頭の通知・約束も書いておく。

③ 地位特定者の雇用契約書のポイントは次のとおり。

(ア)雇用契約書を個別に作成する。

(イ)営業部長や製造部長などの地位を特定する。

(ウ)雇用契約書に会社が望む仕事の内容・成果を具体的に記載する。

(エ)会社が望む仕事の内容または成果を達成できなければ、解雇などの処分を行う、と一文を入れておく。

(オ)中途採用者で、即戦力として結果を求め、未達なら辞めて欲しいのならば、その地位に相応しい賃金の処遇や待遇を記載しておく。

 

それでは、Xの代理人の立場で、[Xの言い分]から要件を当てはめて、事実を検討します。

(A) Xは、新人制度等を構築する目的を持って、銀行を退職して従業員数150名程度の中小企業に経営企画部長という部長職(専門職ではない)で中途退職されたので、その成果、成績、勤務態度等の評価は、通常の長期雇用の平社員とは違い、より厳しい目で見られるべきであるというのは首肯できる。

(B) とは言え、Xは、その持てる能力の範囲内でY社という新しい環境に適応し、成果をあげるべく努力をしてきたが、社長をはじめとするY社からの指導・支援が乏しく、思うように成果をあげられず、かつ、その勤務態度が中小企業としてのY社では浮くように受け止められ、段々窮地に追い込まれていった。

(C) 加えて、X側の事情として、Xは、将来Y社の取締役への就任もあるとの提案を受け、長期安定的雇用で経営幹部になるという前提で銀行を退職してY社に転職しており、必ずしも新人制度等の構築のみを目的(仕事の成果)として、雇用された訳ではなく、Xの評価は、専門性+経営幹部としての適性・貢献に依ってなされるべきものであり、本件の解雇に至るY社によるXの評価がこの基準に従って適正になされれば、就業規則に定める解雇事由に該当するほど、「劣悪で改善なく、従業員として不適格なとき」とまでは言えないと考えている。

(D) 以上の検討から、Xの代理人としては、次の事実を列挙する(Xの言い分の順番で)。

 ① 人材紹介会社の紹介により、将来は銀行の経歴を生かして経営に関与する取締役にもと誘われて、大学卒業後就職したA銀行を退職してY社に転職したこと。

 ② Y社に入社して新人事制度等の構築に着手したがY社の社内事情から難航した。それでも何とか案を作って社長に提出したが否定され、方針の指示等を求めても明確な方向性を示して貰えず放置されたこと。

 ③ Xによる新人事制度等の構築の指導・支援をする代わりに、Xを無視してコンサルタントに外注して、そちらの主導で強引に新制度を導入して運用を始めたこと。

 ④ 本年4月から取引先営業活動を担当するようになったので、銀行での経験を生かして努力してこれを遂行したこと。

 ⑤ 経営企画部長として、社長に対して経営改善の進言をしてきたことで、かえって疎んじられるようになったこと。

 

 小問(2)の回答欄に収まるように、上記(D)の5項目を、もう少しコンパクトにまとめれば、回答例になると思います。繰り返しになりますが、短期的プロジェクとのためにスキルを買われて、直接的な成果を求めて中途採用したとY社側は言いたいのでしょうが、実際には、甘い話をしてXを釣ったのではないのか?とXは受け止めており、本問で提供された情報だけでは、Y社がどの程度Xへの要求(目標、成果、評価基準等)を明確に示したかが不明なので、Xの代理人としては、反論を受けることはあっても勝てると考えて、以上のような事実を挙げて、解雇権濫用によって解雇無効を主張することになると思います。

 この小問、単に、回答例を書くだけなら簡単なのに、そこに至る検討過程を書くことに時間を取られました。今回の記事も大量になり、疲れました。

 

****************************************

 

 結局、第2回第1問は、Y社がXを採用するときに提示された条件、採用面接のときの会話の内容、雇用契約書の記載内容等の情報が不足する中で、すべての場合分けをして分析をする時間もスペースもないので、(試験本番では)受験生の知識と経験に基づいて、ありそうなストーリーを想像して事実を拾い上げていくという(第1回第1問と比較して)かなり難しい問題になっていると考えています。

 今回の記事は、かなり難しい内容になっていてなかなか理解が進まないのではないかと考えています。その場合は、後日(第2回過去問の解説終了後)、「最近の試験問題の構造分析」をしますので、そこを読んでから再度この記事を読んでいただくと理解が深まると思います。

 「自分が何をやっているのか?」という意味を考えずに、ただただ過去問の模範答案を暗記するような勉強では合格できないレベルの試験になっていると思う、今日、この頃です。

 一般の社会保険事務の代行や年金相談や労働相談をやっているだけでは経験しない(というか巻き込まれることのない)、申請人(労働者)と相手方(使用者)が、法廷で殴り合う(攻撃と防御と反撃を繰り広げる)ことの一種格闘技の訓練を受けているのだという風に、普段の仕事から頭を切り替えて受験勉強に取り組んでください。「自分は、難しい社会保険労務士試験に合格したのだから、簡単な試験だ、そんなに勉強しなくても合格するだろう」と甘く見ていると、痛い目に遭いますよと予告しておきます。

第2回試験問題の解説(その1)

 今回は、第2回第1問の小問(1)について検討します。昨年の5月2日と5月4日の記事を一部修正して引用します。今、読み返すと怪しい箇所がいくつも見つかり、冷や汗を流しながら、かなり修正しました。

 私の印象としては、第1回より第2回の方が、かなり難しいですね。実際、合格点・合格率ともに第2回の方が低いですから。

 

第2回第1問の論点解説****************************

 

 本問では、申請人(中途採用された労働者)Xの勤務態度や勤務成績の善し悪しのよる解雇の妥当性(有効性)が争われており、①勤務態度不良による解雇、②職務能力不足による解雇、③職種や地位を特定して中途採用した労働者の能力不足による解雇、④地位特定者の解雇を補強する条件の4つの論点が問われています。第1回と第2回は、同じ平成18年に実施されているので、第1問(紛争事例)、第2問(倫理事例)ともに、(後出しジャンケンで、第2回の受験生が有利にならないように)第1回と第2回では論点も出題形式も変えてあるのかな?(難易度の差が生じないようにすることまで考えると相当苦心したのかな?)と推測しています。

 解雇は頻出のテーマですから、基本書を何度も読んで理解していただきたいので、菅野本 P775-813「第2節 解雇」を熟読してください。

 解雇の論点が出題されたら、常に思い出していただきたいのは「解雇権濫用法理」=労働契約法第16条(解雇)「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」です。本問のXはY社と無期雇用契約を締結しているだから、同法同条が適用になりますが、もし有期雇用契約を締結していたら、同法第17条や第19条が適用になりますが、根底に流れるのは「解雇権濫用法理」の考え方であることを覚えておいてください。

 

 以下、4つの論点について順番に書きます。

 ①勤務態度不良による解雇および②職務能力不足による解雇(普通の長期雇用労働 者の場合)

 菅野本P790-793「(4)勤務成績不良者に対する解雇」が直接の該当部分となります。ただ、整理解雇を含む解雇全体の説明文を読んだ方が理解しやすいので、(くどいようですが)菅野本はP775~793「第7節 解雇」から読まれることをお薦めします(第1回と同じです。)。

 ③職種や地位を特定して中途採用した労働者の能力不足による解雇および④地位特定者の解雇を補強する条件(①②とは基準が違う)

 菅野本ではP791-793「(4)(イ)転職市場型企業における勤務成績不良解雇」が直接の該当部分となります。ただ、(繰り返しますが)整理解雇を含む解雇全体の説明文を読んだ方が理解しやすいので、菅野本はP775~「第7節 解雇」から読まれることをお薦めします。

付随的論点として、⑤通勤手当の不正請求と懲戒がありますが、本問では、Xに対する懲戒(例、減給や出勤停止)ではなく、普通解雇事由の補強材料として扱われているので、懲戒の説明は別の機会にします。興味のある方は、菅野本P700-718「第2款 懲戒」を読んでおいてください。

 検討の道筋を示すために、私のノートの抜粋を次に貼ります。要件・効果以外の注意点も書いてあります。

『第2回

(1)    勤務態度不良による解雇

① 労働者の勤務態度不良は、労務提供義務の不完全履行であり解雇理由となり得るが、懲戒解雇となる事案は少なく、普通解雇とされる場合が多い。

② 勤務態度の不良は、一つ一つの出来事は些細なものであっても、このような事情が恒常的に繰り返されると、勤務態度の不良が重大であると判断され、しかも、使用者側の再三再四にわたる注意・指導にもかかわらず労働者が一向に態度を改めないと、懲戒解雇が認められる場合がある。

③ 勤務態度不良による解雇の妥当性は、問題行動の反復・継続性、使用者側の注意・指導の有無などがその判断要素となる。

(2)    職務能力不足による解雇(次の要素が必要)

① 就業規則に解雇事由の具体的記載があって、それに該当すること。

② 単に能力が他の従業員に比べて劣っているというのでは足りない。

③ その程度が著しいため改善の見込みがないと認められること。

④ 会社の統制上又は営業面で看過できないほど広範囲かつ深刻なものであること。

⑤ 当該従業員を他の業務を配置転換するなどの方法によっても回避しがたい状況に至 っていること。

(3)    職種や地位を特定して中途採用した労働者の能力不足による解雇

① 地位特定者とは、会社が特定の仕事が出来ることを前提に、それを期待して賃金や権限を優遇して雇用された従業員である。

② したがって、このような地位を特定された従業員が、契約の本旨に沿った仕事ができない以上、契約の解除、つまり解雇されても致し方ないのである。

(4)    地位特定者の解雇を補強する条件

① 裁判で会社側は、労働者の能力不足を理由とする解雇の正当性を主張するために、雇用契約書の内容と、当該労働者の能力不足が債務の本旨に沿わないことを決定づける客観的な事実を、証拠として示さなければならない。

② 会社としては、このような解雇もあり得るとの前提で契約書を作成する必要がある。つまり、これが示せないと話にならない。口頭では不十分だが、答案で事実を列挙するときに書面契約書の記載等が足りなければ、口頭の通知・約束も書いておく。

③ 地位特定者の雇用契約書のポイントは次のとおり。

(ア)雇用契約書を個別に作成する。

(イ)営業部長や製造部長などの地位を特定する。

(ウ)雇用契約書に会社が望む仕事の内容・成果を具体的に記載する。

(エ)会社が望む仕事の内容または成果を達成できなければ、解雇などの処分を行う、と一文を入れておく。

(オ)中途採用者で、即戦力として結果を求め、未達なら辞めて欲しいのならば、その地位に相応しい賃金の処遇や待遇を記載しておく。』

(参考)

「法的三段論法」

大前提

要件→効果(法命題)

小前提

事実→要件(事実へのあてはめ)

結論

事実→効果(具体的な価値判断)

 

第2回第1問小問(1)の解き方************************

 

小問(1)

Xを代理してあっせん申請をする場合の「求めるあっせんの内容」を、箇条書きしなさいと問われています。出題の趣旨と配点は次のとおりです。

 〔出題の趣旨〕   Xの主張に基づいてXの代理人である特定社会保険労務士として

         都道府県労働局長にあっせんを申請する場合の「求めるあっせんの

         内容」について、当事者間の権利関係を踏まえて請求すべき内容の

         記載を求めるものである。権利義務を踏まえての記載であるから訴

         状の「請求の趣旨」のように権利関係に立った記載として、本件の

         設例の請求すべき権利関係の基本的理解を問うもの。

〔配点〕 10点

 本問のように、特定社労士試験の第1問(紛争事例問題)小問(1)では、あっせん申請をする場合、「求めるあっせんの内容」はどうなりますか?それを訴状の「請求の趣旨のように」書きなさい、と問われるケースが多いと思います。

回答例

①(申請人)Xは、(相手方)Y社に対し、雇用契約上の地位にあることを確認する(こと)。

②(相手方)Y社は、(申請人)Xに対し、平成18年10月1日以降、毎月25日限り金50万円、毎年7月10日限り金100万円および毎年12月10日限り150万円ならびにこれらに対する各支払日の翌日から支払い済みまで年3パーセントの割合による金員を支払う(こと)。

(注)括弧内の申請人・相手方・ことは、省略可能です。実際の調停やあっせんの申請書では、請求の内容をもっと細かく具体的に書く手もありますが(その方が和解の交渉が容易だから)、試験本番でそのようなことに時間を掛けることは無駄と考えますので、必要十分な短い文章で、しかも決まり文句を使って書けるよう練習してください。遅延損害金の法定利率は、当時は年6パーセントでした。

 

 以下、なぜ、この書き方になるのかについて解説します。

 

「求めるあっせんの内容」=「請求の趣旨のように」

 

第16回第1問小問(1)出題の趣旨には次のように書かれています。「解答にあたっては、本問が労働契約上の地位の確認という法的構成による請求を求めているので、「求めるあっせんの内容」は、訴状の「請求の趣旨」のように、地位確認請求の記載と、それに基づく賃金請求の記載を求めるものである。」

 この例のように、特定社労士試験の第1問(紛争事例問題)小問(1)では、あっせん申請をする場合、「求めるあっせんの内容」はどうなりますか?それを訴状の「請求の趣旨のように」書きなさい、と問われるケースが多いと思います。

 もう1つ例を挙げれば、第15回(令和元年度)第1問小問1は、有期雇用契約の契約期間中の解雇の事例で、「・・・本件解雇の無効を主張し・・・求めるあっせんの内容はどのようになりますか?」と問われています。河野順一さんの過去問集の模範解答例では、①「申請人Xは、相手方Yに対し、労働契約上の地位を有することを確認する。」となっているはずです(②給付訴訟の回答省略)。これは、繰り返し出題されて来た「求めるあっせんの内容」=「請求の趣旨のように」として、同模範回答例のように書けば正解とされてきましたが、何かおかしいとは思いませんか?

 なぜ、「申請人Xは、相手方Yによる令和元年9月末日付け解雇は無効であることを確認する。」と書かないのか???

 これは、民事訴訟法の確認訴訟における確認対象選択の適否の問題です。この点については、前述の参考図書の1つである「労働紛争処理法」山川隆一著、弘文堂、P140-143に詳しく説明が書かれています。簡単に言うと、過去の解雇の無効の確認を求める訴えは、過去の法律行為の確認を求めるものとして訴えの利益がなく、原則として、認められないので、現在の法律関係(雇用が継続している)を対象とするものとして訴え(確認)の利益を裏側から認めてもらうという請求をしているのです(地位確認訴訟と呼びます。)。ここで民事訴訟法の知識が要ると言うことがお分かりいただけましたね。

 確かに、解雇無効なら、模範解答例の書き方を決まり文句として覚えて書けば、それでOKなのかもしれません(「訴えの利益」なんて言葉は知らなくても)。しかし、例えば、①配転辞令の無効、②出向辞令の無効、③いったん書いて提出した辞職願の無効(民法改正後は錯誤も含めて取消)、④内定取消の無効などの場合は、どうでしょうか?

 全国社会保険労務士連合会の参考図書の1つ「労働紛争処理法」山川隆一著、弘文堂によれば、①は「配転先Aでの就労義務が存在しないことを確認する(過去の法律行為だから消極的確認訴訟になる。)。」、②は「出向先Bでの就労義務が存在しないことを確認する(過去の法律行為だから消極的確認訴訟になる。)。」となっていますが、③と④については、直接の言及がありません。例えば、詐欺・強迫・錯誤に基づく瑕疵ある意思表示を原因とする辞職願を取消(遡って無効)にしたいなら「令和○年☓月△日付けで申請人Xから相手方Yに提出された辞職願の取消を求める。」という形成訴訟ができるのか、それとも「申請人Xが、相手方Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。」という地位確認訴訟の形態をとるのか?と迷います。④については、「令和○年☓月△日付けで相手方Yから申請人Xに通知された内定取消の取消を求める。」というのはいかにも変ですから、例えば「申請人Xが、相手方Yに対し、令和○年☓月△付けで雇用契約を締結する権利を有する地位にあることを確認する。」とするのかな、と考えます。

 何を言いたかったのかというと、第1問小問(1)は、配転10点でも侮ってはならないし、「労働紛争処理法」山川隆一著、弘文堂(平成24年1月刊)という本には、その解答に役立つ個別労働紛争を民事訴訟法的観点から分析して、「第3部 労働法における要件事実」に整理してくれているので、答案を書く際の理論的根拠の学習に役立つと言うことです。ただし、改正民法と改正労働契約法は反映していないので、この点は注意が必要です。第1問小問(1)における(未払い賃金などの)給付請求部分を書く際の注意点については、後日述べます。

 

 ということで、後日述べると書いておいた②(未払い賃金などの)給付請求部分について説明します。

 そもそも、(解雇無効の可能性のある)合理的な理由なく解雇された労働者が、当該解雇が無効であるという判決等を得て職場復帰等する場合に、解雇されてから解雇無効判決等を得るまでの間の賃金は請求出来るのかが問題となります。菅野本P803-805(9)解雇期間中の賃金にその説明が書かれています。菅野本のP803-804の一部を抜粋して、次に書きます。

『・・・、解雇されてから無効判決を得るまでの間の賃金は、その間の労働契約関係が存続していたものとして、双務契約における一方債務の履行不能の場合の反対給付請求権(民法536条)の問題として処理される。すなわち、客観的に合理的理由のない(または相当性のない)解雇を行った使用者には、解雇による就労者の就労不能につき原則として「責めに帰すべき事由」ありとなるので、労働者は解雇期間中の賃金請求権を失わない(同条2項)。しかし例外としてたとえば、・・・(略)。

 解雇期間中の賃金請求権が肯定される場合には、その額は、当該労働者が解雇されなかったならば労働契約上隔日に支給されたであろう賃金の合計額となる。これは、基本給、諸手当、一時金などにわたるが、通勤手当のように実費補償的なものや、残業手当のように現実に従事して初めて請求権が発生するものなどは除外される。』

 菅野本には、出勤率・出来高・査定や昇給・昇格の扱い、他の事業所で働いて得た賃金等の取扱いなどについても書かれているので、菅野本をお持ちの方は、該当箇所を読んでおいてください。

 「解雇無効なのだから、その間の未払い賃金は、支払って貰えて当然だ」と感情的にならず冷静に、しかも固定された金額ではない勤務状況に応じて決められる報酬(例えば、ボーナス)については客観的に、法律構成を考えましょうということです。

 ここで、もう1冊基本書を紹介しておきます。特定社会保険労務士前田欣也著「【3訂版】個別労働紛争あっせん代理実務マニュアル」日本法令令和3年4月20日3訂初版(以下、「前田本」と略します。)です。前田本は、論点ごとの申請書と答弁書の書き方の解説が優れていますが、その前半部分も大変有用な情報がたくさん載っています。同書のP81-85「7 労働関係における危険負担の考え方」に、この賃金請求権の詳しく載っていますので、(いずれ必要になる)前田本を買って、この部分を読んでおいてください(「危険負担」は法律学小辞典5で調べてください。)。

 最近は、あまりこの②(未払い賃金などの)給付請求部分でややこしい出題はないのですが(過去にはあります。)、近い将来、上述のような変化球の出題がされることも考えられるので、賃金請求の部分について、しっかり準備をしておきましょう(上述のように地位確認請求の部分の準備も怠らず。)。

 

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次回は小問(2)の要件への事実の当てはめを検討します。

 

追伸

 労働関係の相談業務の勉強のために、布施直春著「改正女性活躍推進法と各種ハラスメント対応」2019年10月19日第1版を、某大学の図書館で借りて読みました。第1部の法令の解説、ハラスメント規程の例ぐらいまでは、まあ知っているというか、よくある内容だなと思いながら読んでいましたが、第2部「企業の各種ハラスメント防止措置と発生時の対応」、第3部「ハラスメント被害者が発症するおそれのある精神疾患の種類、特性、職場における配慮のしかた」、第4部「従業員が精神疾患を発症した場合の使用者の義務・責任と社会・労働保険の取扱い」は、(少なくとも私には)目を見張る内容でした。

 セクハラやパワハラ民事訴訟による法的責任追及と並行して、労災保険雇用保険、健康保険等の社会保険との重なりや控除のあり方について分析してあり、おまけに、それぞれの社会保険の申請から交付までの手続や行政等の審査基準などについても触れています。特筆すべきは、上司が部下をいじめたいわゆるパワハラを超えて、過労死や過労自死にまで至った労働者(被害者)とその家族のとるべき手段まで解説してくれていることと、パワハラの法的責任追及の際に、「上司の不法行為+雇用主の使用者責任」ではなく、雇用主の「安全配慮義務違反」を根拠にする方が適するケース(紛争の内容)の区分け(従来これが分りにくかった)のヒントを与えてくれたことです。「犬も歩けば棒に当たる!」「何でも見てやろう!」

 ということで、この本を購入しました。2番目のポイントについては、改めて、過去問でパワハラを扱うときに使わせていただきます。

まあ皆さん、聞いてくださいよ!

大型連休中も受験勉強していますか?私は、古傷の右膝に痛みが走って医者通いになり、大人しく過ごしています。

さて、今後の記事の予定を書きます。毎週土曜日午前0時に公開は変わりません。第1回の過去問3本の次は、第2回の過去問4本です。これが終わったら、特定社労士試験問題の構造分析とその解き方6本の原稿が出来ています。7月まで順番に記事を公開して行く予定です。その次は、第1問(労働紛争事例問題)は各論点の解説をテーマにして過去問を切り貼りした記事を書いて、第2問(倫理事例問題)は、過去問を年代記的に第3回から順番に解説記事を書いていく予定です。

昨年度の試験のための記事を読む必要はないと考えますが、本年1月からの記事は、この連休中に一度読み直しておくことをお勧めします。

月刊社労士の5月号か6月号に、個別労働紛争解決手続代理業務の試験、いわゆる特定社労士試験の受験手続きの案内記事が載りますから、忘れずにチェックして、書類を取り寄せてください。

以上、人生幸朗師匠でした。

第1回試験問題の解説(その3)

 本日は、第2問の解説をします。受験生は、配転30点の第2問(倫理事例問題)を苦手にする人が多く、総得点では合格ラインを超えていても、倫理10点の足切りにひっかかって涙を飲む受験生が、チラホラいるという噂を聞きます(実際そうだった人を知っていますし、第17回はそういう人が多かったと噂で聞きました。)。

 第17回(令和3年度)の第2問が良い例なのですが、社労士法第22条2項に関する問題は出尽くした(というか、ここは受験生が必ず押さえてくるので)感があるので、最近は、少し射程範囲を広げた設問が出るようになりました。しかし、社労士法第22条2項が、個別労働紛争解決業務を受任できるか否かの判断の基準を具体的に規定しているので、勉強のスタートとしては、やはりここから始めるべきと考えています。よって、まずは、昨年4月2日の記事を一部修正して引用します。

 

倫理事例問題は社労士法第22条第2項の解釈から始まった。************

 

 特定社労士試験第1問は労働紛争事例の問題で、今まで述べてきた憲法民法、刑法、民事訴訟法、労働契約法、労働基準法等の知識やご自身の社会経験を駆使して、使用者と労働者の間の紛争を解決するという問題です。一方、第2問の倫理事例問題は、特定社労士の目の前に現れた依頼者(以下「クライアント」と言います。)の仕事を、現在の他のクライアントや過去の他のクライアントとの利益相反関係や彼らに対する守秘義務から考えて、受任して良いか、それとも良くないかを、社労士法等の数少ない条項を手がかりに判断するという、まったく異質な問題です。私は、第2問の方が、解法のテクニックを見つけ易いし、マスターし易くて、得点源にできるのではないかと考えています(問題文も短いですし。)。でも、つかみどころがなくて、どうして良いか分らず、苦しんでいる受験生がかなりの数いるのも事実です。

 いきなり最近の複雑化した過去問から始めると説明がややこしくなるので、私の古い友人のベテラン特定社労士が冗談で、「第1回は名前を書いたら誰でも受かった!」と言っていた(第1回を受験して合格された方で、同様に言われる方は何名かおられますが、あくまで大阪人特有の自虐的ギャグにしておられるのだと思います。)。第1回(平成18年度)特定社労士試験の第2問を例にして、社労士法の条文を事実に当てはめながら、答えを導き出す説明をします。

 まず、社労士連合会が公表している第1回第2問の出題の趣旨は、次のとおりです(抜粋します。)。これを読んだだけで答えが書ける人はすごいなあと思いますが、大抵の人は無理でしょう(私も無理でした。)。

 小問(1)及び(2)

[出題の趣旨] 

社会保険労務士法第22条は特定社会保険労務士が行いえない事件を定めているが、本問は、主に同条第2項の理解の程度を問う倫理の問題である。

 ここでは、同項が定められた理由、「協議を受けて賛助する」ことの意義、そして、同項については、受任している依頼者の同意があっても、代理業務ができないと定められていることなどについての正確な知識と理解が求められている。

 

 続いて、社会保険労務士法(以下「法」という。)第22条は次のとおりです(問題文には条文の引用はありません。)。同条のうち、本文でその適用のあり方を問われているのは、第2項第1~3号(太字の部分)です。さらに、「協議を受けて賛助する」ことの意義、について問われています。実は、法第22条の解釈については、能力担保研修の第16回(令和2年度)特別研修 グループ研修・ゼミナール研修教材のP116-118に=社会保険労務士法の解説(抜粋)=として書かれています(法全部はP83-115に記載)。この解釈を法第22条の下に掲げます。

 

(業務を行い得ない事件)

第22条 社会保険労務士は、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない。

2 特定社会保険労務士は、次に掲げる事件については、紛争解決手続代理業務を行ってはならない。ただし、第3号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

1.     紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

2.     紛争解決手続代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

3.     紛争解決手続代理業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

4.       開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が、紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であって、自らこれに関与したもの

5.       開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が紛争解決代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであって、自らこれに関与したもの

(用語の解説)

・           「相手方」―――――――外形的に紛争があるように見えても、当事者間に実質的な争いがない場合は、相手方にあたらない。

・           「協議を受けて」とは、具体的事件の内容について、法律的な解釈や解決を求める相談を受けることをいう。したがって、単に話を聞いただけであるとか、立ち話や雑談の域を出ないものであって、法律的な解決にまでは踏み込まないものについては、ここでいう「協議を受けて」にはあたらない。

・           「賛助」とは、協議を受けた具体的事件について、相談者が希望するような解決を図るために助言することをいう。内容としては、相談者に対して事件に関する見解を述べたり、とるべき法律的手段等を教えることである。したがって、相談者の希望しない反対の意見を述べた場合等には、ここにいう賛助にあたらない。

 

小問(1)は、特定社労士甲は、過去にX市の無料相談会で労働者Aから、勤務先のB社から労働条件の切り下げを受けたので、その件でB社を相手にあっせんを申請するためのあっせん申請書に記載すべき申請内容や手続について協議し、指導したのだけれど(労働者Aから代理行為の受任はしていない)、後日、当該紛争について、相手方のB社の代理人になることはできるか?を問うています。

 法第22条2項1号が適用になって紛争解決代理業務を行ってはならない事件に該当するか?が論点です。この場合、労働者Aは、一方的労働条件切り下げという紛争(事件)の相手方当事者であり、「相手方」に該当します。労働者Bの無料相談会での特定社労士甲への相談内容は、当該紛争解決のためのあっせん申請書の内容や手続について協議して、甲はBに指導した(甲は、申請に反対せずむしろ申請を手伝った。)のですから、甲はBから「協議を受けて」、「賛助した」と言えます。よって、本件B社からの依頼は、社労士法第22条第2項第1号に該当するので、受任できないとなります。

 私としては、この小問(1)の事例は、同法同条同項第2号にも該当する可能性があると思いますが、150字という字数制限の中で、そこまで議論すると字数オーバーになるかな?と思い悩むところです(2号適用の可能性について議論しなくても合格点は貰えると思います。)。

小問(2)は、(1)と同様の状況で、特定社労士甲が、労働者Aの同意を得たら受任できるか?と、さらに問いかけています。同法同条同項第1号には、「相手方(ここではA)の同意があれば受任できる」とは定められていません。一方、「相手方の同意があっても受任できない」とも定められていません。相手方Aが、「気にせずB社の代理人になってください。」と言ったとして、やっぱり、目の前の依頼者(B社)の代理人になってはいけないのか?が論点です。そこで同条同項ただし書を見ます。「ただし、第3号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。」と書かれています。

 これは同条同項第3号の場合には、「利益相反のおそれのある当事者の同意があれば、受任しても構わない。」、と言ってくれています。裏を返すと、同法同条第1号と第2号の場合は、「利益相反のおそれのある当事者の同意があっても、受任してはならない。」と言っていると解釈することになります。したがって、本問では、「仮に労働者Aの同意を得たとしても、B社の代理人になることはできない」と法律の条文が明確に禁止しているので、受任できないと答えることになります(注)。

 

(注)法律学小辞典5P1207の「法の解釈」を読んでおいてください。

 

 倫理事例の問題を解くにも、法律の条項の解釈が要り、その解釈した条項の意味に事実を(評価して)当てはめて、その効果を見るという作業があると言うことが、理解いただけたでしょうか。私は、「本人同意」はオールマイティに近くて、「本人同意を得て、しかも特定社労士が同意した者を害さずに仕事ができると考えるなら、どんな場合でも受任できる」と法の条文に定めておくべきだとは思いますが、現実は、そうなっていません。そこのところが、この倫理事例の解き方を難しくしているのではないか?と思う今日この頃です。

 ここまで読まれたら、第1回特定社労士試験の過去問を見て、実際に第2問の回答を紙にボールペンで手書きしてみてください(字数制限を守って。)。まず、何(キーワード等)をどの順番で、どのような接続詞を使って書けば、出題者の意図に沿った回答になるかです。そう簡単には書けないと思いますので、次回、答案の書き方を説明します(当時は、たった1条の解釈で解けたのか?羨ましいなあ、とは考えないでください。)。

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 それでは、実際に第2問の解き方を説明します。昨年4月4日の記事を一部修正して引用します。

第1回(平成18年度)特定社労士試験の倫理事例問題の解き方**********

 

 まずは、質問(出題者)の指示どおり書くことです。小問(1)「甲はB社からの依頼を受けることはできるか、その答えと理由を解答用紙第6欄に150字以内で記載しなさい。」となっています。問われているのは、「甲はB社からの依頼を受けることはできるか?の答え」と「(その)理由」です。よって、最初に「(特定社会保険労務士)甲はB社からの依頼を受けられない(受けることはできない)。」と書いて、続いて「なぜならば、********。」とその理由を書いていくべきだと思います。

 よく日本人がやってしまいがちな誤りとして、頭から「******で・・・・・だから、依頼を受けることはできない。」とだらだら書いて、結論がなかなか登場せず、挙げ句、前半の説明と結論が微妙にずれていて、一体、この回答者は出題者の指示や意図を理解しているのか?と疑問を抱かせることです(実際には理解していても。)。よって、まず、最初に結論をボン!と書いてから、何故そう考えるのか?という理由(該当条項と事実のあてはめ)を書くという、書き方を心がけてください。もっとも、第12回からは、結論欄と回答欄が分けられて、第14回からは、「『(ア)受任できる』か、『(イ)受任できない』を結論欄に記号で記載し、」となったので、今では、「(ア)」か「(イ)」の記号を書けばよいことになっています。

 ここで細かなことを言いますと(最近の問題の注意点です。)、「記号で記載し」となっているので、記号のみを記載し、その後の「受任できる」とか「受任できない」は書いてはならないし、記号は(ア)と(イ)なので、単に「ア」とか「イ」とか書いたのでは、正確に記号を書いたことにならないということです(つまり、(ア)(イ)と書く。)。こんな細かいことで減点されるのか?というとよく分りませんが、減点することは可能ですから、つまらぬところで足をすくわれる(足元をすくわれるは誤用です。)ことのないよう、気を付けてください。老婆心ながら(爺ですが。)。

 ついでに、もう一つ。本番では(事前の準備でも)、第2問(倫理事例問題)を先に解いてから、第1問(紛争事例問題)に取りかかるようにしてください。理由は、第2問の方が第1問と比べて配転が30/100と少ない関係で、圧倒的に問題文が短く、質問数も少ないので、早く答案が書けます。120分の試験時間のうち、30~40分で第2問を仕上げる準備をしていって、実際、さっさと片付けてから、本丸の第1問に迫る方が、効率的だし精神的にも余裕が生まれるからです。逆に、先に長文で質問の多い第1問から取りかかって、解答に手間取って90分以上かかってしまったら、疲れ果てた後で、焦りながら短時間で第2問を解いて、最悪時間切れに追い込まれて小問(2)(15点、しかも足切りあり。))を諦めることになります。それなら、第1問小問(5)(10点)を諦める方が得策だと思いませんか(諦めずに済むとは思いますが。)。

 もう一つ、細かいことを言います。字数制限の「150字」と「150文字」の違いが分りますか?簡単に言うと、「字」は「。」と「、」(句読点)を含みますが、文字には含まれないと言うことです(数字は文字です。)。よって、「150字以内で記載しなさい。」と言われたら、当然、句読点にも1マス与えることになりますが、ここで問題が生じます。通常、横書きの日本文を原稿用紙に書いていて、右端の最後に句読点が来たら、最後の文字のマスに入れてしまいます(・・・た。とか、*****だ。)。このとき、句読点を最後のマス目にいれてしまったら、字数を1字誤魔化したことになりませんか。だからと言って、次の行の頭に句読点を書くことも出来ませんよね。さて困りました。こんなことにならないようにするには、下書きをしてから清書する、下書きをする際に、右端のマスに文字と句読点を一緒に入れることにならないように、文章の書き方や用語の使い方を工夫する必要が生じます。例えば、「社会保険労務士」と書くか「社労士」と書くか、「特定社労士甲」と書くか単に「甲」と書くか、などの書き方のバリエーションをあらかじめ用意しておくと、その場で慌てずにすみます。

 以上、クドクドと細かな注意点を述べてきましたが、それは、緊張した試験会場で「あれっ、どうしよう?」とか迷いだしたら時間のロスですし、下手をすると間違った答えを書くことにもなりかねません。だから、普段の勉強(特に、答案を書く練習)のときから、これらの注意点を考慮しながら、本番で答案を書いているつもりで、練習をしておいて欲しいのです。小さなことの積み重ねが、1点、2点の差になって、合否を分けることになる場合がありますから、防げるミスは防ぐという姿勢で、勉強に取り組んでください(注)。

 

(注)第17回(令和3年度)のように合格率が下がっているときは、ボーダーライン上に多くの受験生が並んでいるので、この1点、2点の差が、天地の差ぐらいの結果をもたらすことを肝に銘じておいてください。

 

 閑話休題小問(1)の続きに戻ります。

「甲はB社からの依頼を受けることはできない。なぜなら、B社は甲がAから相談を受けて申請内容や手続について協議し、指導するなどの賛助をした事件の相手方に該当し、B社の依頼内容は社労士法第22条第2項に定める業務を行い得ない事件に当たるからである。」ぐらいかな。もっと簡単に「甲はB社からの依頼を受けることはできない。なぜなら、甲が相談を受けて協議し、賛助したAとの間の当該事件についてB社の依頼を受けることは、社労士法第22条第2項第1号に該当するから。」ぐらいでも十分合格点かなと思います(キーワードを書いてあるから。)。

 要するに、社労士法第22条第2項第1号を知っていて、本件がこれに抵触するから受任してはならないということの理解を問われているということが分ったうえで、「分ってますよ!」と出題者(採点者)に答えてあげれば良いのだと思います。

 小問(2)です。この問題は、実は小問(1)より、書き方が難しいと思います。法22条2項ただし書がどこに掛かっているのか?という条文の解釈の理解を問うているのだと思いますので、素直に書くとこうなります。

 「甲はB社からの依頼を受けることはできない。なぜなら、社労士法第22条第2項ただし書は、同法同条同項第3号のみに当てはまるので、同1号が適用される本事件では、Aによる同意は、甲の受任禁止を解除する理由とはならないから。」

 単に、同条2項1号事件だから、同条2項ただし書は適用されず、同意は禁止の解除事由にはならないと言うのなら、次の書き方もできますが、やっぱり、条文の解釈力を問われている質問への解答としては少し弱いと思います。仮に、同3号なら同意を得れば受任出来るのだが、と後で付け加えたとしてもやはり同じです(書かないより書いた方が、点を少しは貰えるとは思いますし、これでも十分合格点だと思います。)。

 「甲はB社からの依頼を受けることはできない。なぜなら、社労士法第22条第1項第1号は、過去に当該事件について甲の協議と賛助を受けたAの同意を得ることを受任の禁止を解除する条件とは認めていないから。」

 以上、回り道をしながらやっと結論にたどり着きました。

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 この記事で、第1回の過去問の解説を終わりました。

特定社労士試験の最初の年度にあたる平成18年は、受験者数が多くて、第1回と第2回の2回に分けて試験が実施されました。同じ平成18年に実施されていますが、第1回と第2回では特に第1問(紛争事例問題)の設問のスタイルが大きく変わっている(第2回の方が最近の試験のスタイルに近い)ので、ここで第2回の解説もやっておいた方が後々の解説の理解が進むのではないかと考えるようになりました。そこで、予定を変更して、「最近の試験問題の構造分析」の前に、第2回の過去問の解説を次回から書くことに決めました。

 これまでの記事の目次と次回以降の記事の目次の当面の予定を参考のために掲げておきます。

 

3月20日 第18回(令和4年度)特定社会保険労務士試験に向けて

3月26日 ザックリした話(その1)

4月2日  ザックリした話(その2)

4月9日  ザックリした話(その3)

4月16日 第1回試験問題の解説(その1)

4月23日 第1回試験問題の解説(その2)

4月30日 第1回試験問題の解説(その3)

5月7日  第2回試験問題の解説(その1)予定

5月14日 第2回試験問題の解説(その2)予定

5月21日 第2回試験問題の解説(その3)予定

以 上

 

追伸

 大江英樹著「知らないと損する年金の真実 【2022年「新年金制度」対応】」ワニブックスPLUS新書2021年10月25日初版発行を読みました。タイトルから、年金制度の悪口を書いてあるのかな?と推測していましたが、まったく逆でした。日本の年金制度を肯定した上で、一般人向けに分かり易い制度の解説と年金を受給する際の注意点などが書かれていて、一般人にはこういう説明をするべきだなと感心しました。

 一方、最近、私が社労士でもあることを知らない「年金の受給で失敗した(損をした)」と思っている方々から、世間話とも愚痴ともつかない話を聞かされました。お二人とも、年金事務所などで年金相談を受けている社労士が不勉強で頼りにならないとひとしきりぼやいていましたが、私としては、肯定も否定も出来ずに、「そうですか」と言いながら、ただただ頷くばかりでした(本当は、「おっしゃるとおり、年金相談を受けながらそれが不得手な社労士も多いんです」と言いたかったのですが・・・。)。

 せめて、上述の本(特にP200からの「年金の受け取り方で注意しておくべきこと」)を先に読んでおけば、あの人達の失敗は防げたんじゃないのかな?と思う、今日、この頃です。

 ところで、同書で、社労士の頭の体操になりそうだと思われる箇所があるので、次に引用して解説します。

P196*************************

 『逆に繰り下げで受給を待機している最中に死んでしまったら年金は1円も受け取れません。しかし、そもそも死んでしまったら得も損もありません。年金の本質は「保険」、それも長生きした結果、お金がなくなってしまうというリスクに備えるためのものですから、可能であれば繰り下げをしておいた方が安心なのではないかと私は考えます。実際に私も現在69歳ですが、働いて厚生年金保険料を納めており、年金はまだ全く受け取っておりません。』

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 ここで、私が気に掛かったのは、「特別支給の老齢厚生年金」の受給をどうしているのか?という点です。著者は、1952(昭和27)年生まれの男性ですから、60歳から65歳到達まで5年間、報酬比例相当部分が受給できたはずです。

 ここで論点が2つあります。①まず、特別支給の老齢厚生年金に在職老齢年金が適用されて支給停止になるのか?②次に、仮に、著者の収入が少なくて特別支給の老齢厚生年金の受給権があるのに、請求手続をせずに放置しておいて、70歳で老齢厚生年金+老齢基礎年金の請求手続をしたら、特別支給の老齢厚生年金の分も繰り下げ支給として0.7%の上乗せがなされて金額が増えるのか?

 昭和30年代後半以降に生まれた人には関係ない話なので、社労士でも、若い人には未知との遭遇かもしれません。

 ①は、特別支給の老齢厚生年金も在職老齢年金として支給停止や減額の制限を受けますから、著者の場合、ゼロだった可能性が高いですね。②は、これは、以前、自分の問題として年金機構に電話して確かめたところ、「特別支給の老齢厚生年金には繰り下げ支給の制度は適用されません。特別支給の老齢厚生年金は請求手続をせずに放置しておくと5年で時効になりますから、必ず、早く請求手続をしてください。」と言われました。この有益なアドバイスに従って、現在、私は、特別支給の老齢厚生年金を受給していますが、老齢厚生年金+老齢基礎年金の請求手続は、当面(法改正で75歳まで延ばせます)しないでおこうと思う、今日、この頃です。

 

 

第1回試験問題の解説(その2)

 前回の続きの第1問(紛争事例問題)小問(2)の解説から始めます。

第1問小問(2)

Xは解雇無効を訴えているので、①「雇用契約上の地位を確認する」、無効な解雇がなければ当然②「支払われていたはずの毎月の賃金を支払え」の2点を請求することになりますが、本問では、Xの退職日が5月31日、Xの6月分賃金の支払期日が6月25日、特定社労士試験日が6月17日でしたから、まだ退職の翌月(6月分)以降の個別の賃金債権が確定して債務不履行に陥っている訳ではない(支払の遅延はない)のですが、支払済みまでの遅延損害金年6%(民法改正前の商事債権)まで併せて書いて請求すべきだと私は思います。第1回の特定社労士試験でそこまで気の付いた受験生がどれだけいたでしょうか・・・。また、出題者がそこまで要求していたのかも不明です。

回答例は次のとおりです。

①Xが、Y社に対し、雇用契約上の地位にあることを確認する(ことを求める。)。

②Y社は、Xに対し、平成18年6月1日から毎月25日限り、金19万円の金員および各支払日の翌月から支払い済みまで年3パーセント(当時は6%)の割合による金員を支払え(支払うこと。)。

 

(注1)民事訴訟法上のルールにしたがって、このような書き方が決まり文句になっています。その理由などについては、後日、説明しますので、今はこのように書くのだなという理解で十分です。当時は、民法改正前は株式会社の行為はすべて商行為なので、民事法定利率5%ではなく、商事法定利率6%が適用されていました。今なら、法定利率が統一されて3%になります。ちなみに、このタイプの設問は、最近は小問(1)になっています。

(注2)第1回では第1問小問(2)になっていますが、第2回以降第1問小問(1)で問われてきています。無効な解雇期間中の賃金を請求することについて、菅野本P802-803の(8)解雇の無効とP803-805の(9)解雇期間中の賃金に請求出来る根拠のことが書かれていますから、(この論点を問われることはないと思いますが)菅野本を読んでおいてください。

 

第1問小問(3)

 本問では、Xの代理人として、「Y社の当然解雇になるとういう主張に対してどのような主張ができるか」と問われています。ここで、実際の設問から、少し考え方を変えてみます。まず、Y社がXを解雇するという行為があり、このときY社は自らの行為(解雇)が有効(合法)と考えているからこの行為に出たのです。一方、Xはこの解雇は無効(違法)で自分はY社に勤務し続けられるし、給料ももらい続けられるだと考えて反論する訳です。これが、この設問の個別労働紛争の単純な図式です。

では、Y社は、何を考えてどう行動したから解雇は有効(合法)と言えると考えているのでしょうか。また、Xは、Y社のどのような考えと行為が解雇を無効(違法)にしていると考えているのでしょうか。(全過去問を分析して思うのですが)受験生に、これらを答案上で戦わせる(論理的に書き並べる)のことができる力があるかどうかを試すのが、第1問で主に問いたいテーマだと推測しています。それでは、それを、前回説明した「整理解雇の4要件」に当てはめて、書き出してみましょう。

(Y社の考えと行為)

1.人員削減が緊急課題と言えるほど経営状態が悪化している(累積赤字、民事再生寸前など)。

2.支店数の削減(一部は閉鎖)による経費削減(赤字の縮小)をする際に、希望退職者の募集、出向、転籍、雇用期間満了の雇止め等とともに、全社員一律の賃金20%カットなども実施して、雇用の確保に努力してきた。

3.「地元雇用社員」は、就業規則に定められた解雇事由(勤務する支店の廃止)に該当するので当然解雇になる(地域限定でない正社員のように、全社的な転勤、出向、転籍まで世話をする必要はない)ところであるが、賃金2カ月相当分の特別退職金を上積みしてあるし、X以外の地元雇用社員はすべてこの解雇に応じた。

4.従前から、Y者の経営状況が悪化していることは社内では知られていて、人員削減が起こりうることをXは予想できた。Y社は、就業規則に規定された解雇事由に基づいて、4月30日に1カ月後の5月31日付けでの解雇を労働基準法に従って適法に予告した。

(Xの反論)

1.確かに、経営状況が悪化していて人員削減が必要であることは、自分が解雇になるということを除いて、理解できる。

2.Xが地元雇用社員だからといって、勤務する支店の廃止即解雇というのは、余りに短絡的思考で有り、「雇用期間の定めの無い一般社員と同様に、全社的に転勤、出向、転籍等の雇用維持の努力をする義務があった」(注1)のに、それを実行しなかったのだから、解雇は無効である。

3.なぜ、自分(X)を含む「地元雇用社員」が、雇用維持の検討対象にならずに、いきなり解雇の対象にされたのかの理由が示されていない。

4.確かに、経営状況の悪化に伴う人員削減は予想できたし、就業規則の解雇事由に該当し適法な解雇予告が実施されて、一連の手続が粛々と成されてきたことは理解できるが、解雇される社員の納得を得るという意味での手続が足りず、X以外の地元雇用社員からも不満が出されている。

 

(注1)本問の設例では、「雇用主は、地域限定社員に対して、その勤務する地域の職場が廃止されたら解雇できるという就業規則の定めがある場合でも、全社的な、転勤、出向、転籍などによる雇用の維持の努力義務を負うのか?」という論点をどう解決するかということが、「XとY社の言い分のどちらが通るか(勝つか)」を決めるポイントになるということです。結論を言うと、「Y社はこの努力義務を負っているのに、十分に果たしていないから、Y社の負け」ということになると思います。菅野本「P793-800(5)整理解雇」に詳しく載っているので、読んで置いてください。

(注2)このタイプの設問は、最近は小問(2)になっています。また、最近は、Xの主張を基礎づける事実を箇条書きさせるというスタイルなので、このときとは書き方が変わっていますが、それは第2回以降の過去問の解説で説明します。

 閑話休題。さて、この小問(3)の回答例ですが、次のとおりになります。

(回答例)

労働契約法第16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする(解雇権濫用法理)。」と規定されている。本件Xの解雇は、Y社の経営悪化に伴う人員削減のために行われたものであり、同法同条以上に厳格な「整理解雇の4要件」を満たす必要がある。本件でY社は、Xが地元限定社員であることを理由に、一般の正社員と同様の雇用維持のための転勤、出向、転籍等の検討を行うことなく就業規則の解雇事由該当や退職金の上積みを理由に解雇に踏み切っており、解雇回避努力義務の不履行として解雇は無効である(字余り)。

(注)解雇権濫用法理の上に整理解雇の4要件が載っているという構造まで答案に書いていくと字数制限を超えますし、ここで出題者が書いて欲しいのは「解雇回避努力義務違反」であるということだろうと思われるので、思い切って最初の2行余りを省略する方が、実際の答案としてはベターだと思います。しかし、ここでは、読者の理解のために、あえて書いておきました。

 

第1問小問(4)

 本問では、「Y社の立場で紛争の解決を図るとした場合、実際上どのような方向に向けて具体的に努力することが考えられるか」が問われています。

 昔、オールナイトニッポン(ラジオの深夜放送)でパーソナリティの笑福亭鶴光鶴瓶ではない)が、よく叫んでました。「世の中銭や~!」と。「地獄の沙汰も金次第」とも言います。冗談はこれぐらいにして、現実問題として、金銭解決というのは万能です。仮に、Y社が5百万円支払うと言えば、Xは納得するのだと思いますが、それでは、せっかく、ここまで検討してきた「解雇回避努力義務違反」を治癒するという方向で具体的に努力するということにはならないと思います。また、Xが、その請求で復職を求めているという事実に鑑みると、ここで求められる回答例は、次のようになります。「(万能薬の)金銭解決は最後の手段!」だと覚えておいてください。

(回答例)

Xが復職を求めていることを前提にすると、Y社は、Xが地元限定社員であるということを理由に、雇用期間の定めの無い一般社員と同様に全社的に転勤、出向、転籍等の雇用維持の努力をすることなく解雇に踏み切ったのだから、改めて、このような雇用維持のための検討を行って、Xの請求に応えるべきである。しかし、Y社の努力が実らず、Xの満足の行く結果が得られなかった場合には、特別退職金のさらなる増額によるなどの金銭解決もやむを得ないものと思われる。

 

第1問小問(5)

 第1回と第2回は、特定社労士試験初年度で、人生経験と社会経験の豊富なベテラン社労士が主な受験生でした。そこで、能力担保研修も試験問題も、そのような人たちへの配慮(ボーナス)がなされていたのではないか?と推測しています。いわゆる法的三段論法を使わずに回答できる問題が含まれています。ベテランで似たようなシチュエーションを経験していたら回答は簡単なのですが、若手で経験がないとどう回答したらよいのかと悩んだうえで、なんとか答えをひねり出さなければならなくて苦労したのではないかと推測します。

例えば、第1回第1問小問(5)は、「Xとしては、Y社側からXに対して振り込まれた2ケ月分相当の退職金についてどうすべきでしょうか。具体的な対応策についての見解を解答用紙第5欄に200字以内で記載しなさい。」です。一方、出題の趣旨は、「会社から振り込まれた2ケ月分相当の退職金について、そのまま受領してよいか、解雇の承認の問題についての理解を問うもの」となっています。

 この問題は、どこから来たか?実は、昭36.4.27最高裁二小判決・八幡製鉄事件と昭35.1.27大阪高裁判決・八木組事件がベースになっているのではないか?と推測しています。結論だけ書くと、解雇された労働者が異議なく特別退職金を受領したら、「解雇の承認」をした黙示の承認があったことになるという最高裁判決と異議を留保して受領した場合は承認にはならないという大阪高裁判決があるということです。

(最近ではこのようなスタイルの出題はないのですが)上述の判例の考え方を踏まえた回答のポイントとしては、①XとしてはY社に対し、解雇を承認したわけではないので、(賃金の)2ケ月分相当の特別退職金名目の金員を受領する意思はないことを、②後の紛争の際に証拠となる方法で伝える必要があります。

 ベテランなら、「あっ、それなら内容証明郵便で、解雇の承認拒否と特別退職金相当額は受領せずに預かっておくと伝えておけばよい」とピンときて、10点満点の少なくても5点はゲットとなったかもしれませんが、若手なら①の方は思いついても、②の方は果たしてどうしたものか?と悩むのではないかと思います。

 ここから、②をどうひねり出すか?が6点取れるかどうかの分かれ目です。要するに、①の内容を相手(Y社)に伝えたことを後日証明ができれば良いわけです。例えば、LINEでのやり取りなら、通信の内容・当事者・日時まで記録出来ますし、FAXを送信すれば、受信のFAX番号と受信日時の記録が残ります。私の経験から言うと、内容証明郵便に配達証明を付けて送付するというやり方で、受領されずに戻ってきて困ったことがあります。また、内容証明郵便を送るのは余りに好戦的に見えるので、手紙のコピーを残して、簡易書留にして郵送するというソフトな方法でも、後日、相手は手紙を受け取っているのに、こちらのコピーとは違う内容だと主張するのは難しいし、本問の内容程度の意思表示を否定するというのも大人げない(見苦しい)ので、こちらの主張が通る可能性は高いと思います。よって、若手の方たちがそのとき思いついた上述の代替方法で、その写しや記録をのこしておくという回答でも、②の半分ぐらい(内容証明が5点なら2か3点)は回答したことになるのではないか?と考えています。だから、もしこんな場面に出会ったら(もうこのような設問はないと思いますが)、そのものずばりの知識や経験がなくても(諦めずに)、採点者が求める回答のポイントから遡って、何とか回答をひねり出してください。

 実は、第1回第1問小問(5)の解き方には、ポイント③があります。第1回第1問小問(5)は、「Xとしては、Y社側からXに対して振り込まれた2ケ月分相当の退職金についてどうすべきでしょうか。具体的な対応策についての見解を解答用紙第5欄に200字以内で記載しなさい。」です。一方、出題の趣旨は、「会社から振り込まれた2ケ月分相当の退職金について、そのまま受領してよいか、解雇の承認の問題についての理解を問うもの」となっていますから、上述の解雇拒否の意思を示さずに受領したらダメと書くことで、判決例の趣旨は生かせるのですが、③預かった2カ月分の特別退職金をどう扱うか?という論点には答えていないことになります。

 想像してください。「解雇は無効なので特別退職金相当額は受領出来ません」と文書で意思表示しておきながら、Xがその金員を銀行口座から引き出して消費したら。Xが意図せずに、引落しがあって、当該口座の残高が、特別退職金相当額を下回ったら。Y社から見たら、文書では受領を拒否しておきながら、実質受領して消費しているじゃないか、解雇を認めているのと同じじゃないか、ということになりかねません(主張として合理的)。また、Xの筆が滑って内容証明郵便に「未払賃金額と相殺だと主張したとして」も、そんな債権は紛争途中で未確定だから相殺できないと反論されたらジ・エンドです(注)。だとすると、Xとしては、この金員(Y社のもの)をさっさとY社に返金するか、自らの手の届かない所にY社との紛争が解決するまで安全に保管しておく必要が生じるはずです。つまり、ポイント③は、特別退職金相当額の金員を「速やかにY社に返金する」か、「安全なところに隔離・保管する」という手立てを講じる義務がXにはあるという点です。

 一番簡単なのは、Y社の銀行口座に当該金員を振り込んで返金し、内容証明郵便に「解雇は無効なので特別退職金名目の金員は受領できない。よって、Y社の銀行口座に振り込んだ」と書いて送るという方法です。Y社としては、当該金員をXの口座に振り込んだことで、弁済の提供をしたのにXが受領を拒否したのだから履行遅滞債務不履行)に陥る(後日Xから支払う気はなかったじゃないかと主張される)おそれはなくなるので、Y社から再度Xの口座に振り込むという面倒なことはせず、普通なら、紛争が解決するまで、会計上「預かり金」科目で保有しておくことになるから、当該金員をめぐる取扱いはここで一応止まります。

(注)ここで、相殺(民法505条1項)について、少し勉強してみてください。Y社が退職金名目で振り込んできた賃金の2ケ月分相当額は、本来、XからY社に返還すべき(受け取る理由のない)金員です。一方、解雇が無効だったらXがY社からもらえるであろうと期待している未払い賃金は、Xの勝ち(解雇無効)が決定していない以上、まだ、もらえるかどうか分らない未確定の債権です。だから、筆が滑って、内容証明郵便に「退職金名目の振り込まれた金員と未払いの賃金相当額を相殺する」とまで記載したら、出来もしない(相殺適状にない)相殺の意思表示をしたことになり、減点の対象になると思いますから、要注意です。詳しくは、民法の基本書で調べるか、法律学小辞典5にP808-809に「相殺」、P809に「相殺適状」と「相殺の抗弁」が載っているので、それらを見てください。

 ここまでは、読んでいただいてご理解いただいたと思います。

それでは、なぜY社は、この特別退職金名目の金員を振り込んできたのでしょうか?Y社は、この解雇は適法だと考えているが、Xが気の毒なので特別退職金を支払って、自らの主張を補強したい(または、会社側の誠意を示したい)と考えて、さっさと振り込んで(支払って)しまい、もしXがそのまま受領して解雇を受け入れてくれたらこれ幸い、と判断したかったからだと思います(最高裁判例どおり)。よって、解雇無効を主張するXとしては、意地でもこの金員を受領することはできないはずです。解雇は無効だけどお金は貰っておきますというのは、法的紛争をする者としては脇が甘いといわざるを得ません。

 Y社との紛争の結果Xが勝てば、未払い賃金に充当すれば良いし、Xが負ければそのまま特別退職金として受領すれば良いので、(Y社の金だが)当面預かっておくとXが考えたときです。厄介なのは、先ほど述べたように、当該金員を安全なところに隔離・保管する方法を考えることになります。

 私が最初に考えたのは、「供託」です。法律学小辞典5のP248に供託が載っています(今後出題されるかも知れないので、一度読んでください。)。残念ながら、本問の場合、供託できません。となると、銀行で別段預金でも作って預かって貰うか、弁護士に頼んで預かって貰うか、少なくともX名義の(残高ゼロの)別口座に移して一切手を出さないようにする必要が生じますし、さらに、「こうこう安全に隔離・保管しています。いつでも請求があれば弁済します。」と内容証明郵便に記載する必要まで生じます。もっと厄介なのは、Xが保管している間の法定利息が発生して、万一、返還することになったら利息を付けて返金になるかもしれないという問題です。

 以上のように検討してくると、やはり、Y社の銀行口座に当該金員を振り込んで返金し、内容証明郵便に「解雇は無効なので特別退職金名目の金員は受領できない。よって、何年何月何日に金○○円をY社の銀行口座に振り込んだ」と書いて送るという方法がベストだという結論に達しました。ここまで答案に書いてこそ、「そのまま受領してよいか、解雇の承認の問題についての理解を問う」という出題の趣旨に対する回答になるのだと思います。

 「解雇を認めた訳ではありません」と言いながら、特別退職金名目の金銭を自分の手元に置くと言うことは、事実上、当該「金の受領=解雇を承認した」と受け取られるおそれがあるので、もっと慎重に行動しましょう、と出題者が意図していたとすると、これはベテランへのボーナス問題でもなんでもないということになりそうです。と言うより、受け取る理由のない金員が自分の銀行口座に入ってきたら、振込主に返してしまえば良いと単純に考えて実行するのが、(法的にも)一番簡単で間違いのない対処の仕方だという結論になりました。

 しかも、お金を返してしまえば、解雇を受け入れたと誤解されるおそれもなくなるので、ポイントの①と②が多少雑(内容証明郵便でなくても)でも、余り問題とはならない(手紙でもFAXでもいいから、「解雇は無効だからこの金は受け取らない」と書いて送っておきさえすれば、文書の内容や真実性で争われる可能性が極めて低い)ので、内容証明郵便という厳格な手段を知っていなくても、合格点を貰えるのではないか(新人でも十分戦える)と考えるに至った次第です。

 小問(5)の回答のポイントとしては、①XとしてはY社に対し、解雇を承認したわけではないので、(賃金の)2ケ月分相当の特別退職金名目の金員を受領する意思はないことを、②後の紛争の際に証拠となる方法で伝える必要がありますと書きましたが、振り込まれた金員の扱いまで考えるというポイント③を加えると、相当捻った問題になっているということが、ご理解いただけたでしょうか。かなり回り道をしましたが、この小問(5)が孕む論点を一通り検討した過程と結論は以上です。

 さて、この原稿を書きながら、なぜ、ここまで分析・検討を進めたかと言いますと、潮見佳男他編著「Before/After 民法改正」2017年9月11日刊弘文堂という本を読んでいて、「小問(5)はそんなに甘いかな?」とふと頭に浮かんだからです。この本は、今回の改正の前と後で民法の内容と事実への当てはめがどのように変わったかを、事例形式で多数の執筆者が分担して書かれていて、昔の民法の知識のある人の洗い直しに役立つのと、事例を使って民法の実務への当てはめのやり方を手厚く書かれているので、基本書ではないですが、かなり参考になると思ったので読んでいました(実際、予想通りの実用的な本でした)。民法の改正前の知識をお持ちの方は、この本で、頭の中を整理されることをお薦めします。

 まあ、ここまで手間暇をかけて分析しなくても、ポイント①と②を書いて、(間違っているとしても)預かった金は相殺すると書いておけば(余計なことは書かない方がベターですが。)、その金の扱いについては触れる必要がなくなるのだから、法律の専門家を目指す訳でもない特定社労士試験の勉強としては十分じゃないのか(5-6点は貰えるだろう)?という考え方もあるとは思いますが、他人様の答案を添削するとなると、このぐらい勉強しておかないといけないと思う、今日、この頃です。ということで、回答例は省きます。

 次回は、第2問(倫理事例問題)を書きます。

 

追伸

 元ロシアトヨタ社長・西谷公明著「ロシアトヨタ戦記」中央公論社2021年12月10日初版発行を読みました。発行が昨年末ですので、今回のウクライナ侵攻とは関係ありません。某大学の図書館で、新規入荷本として飾られていたので、一番で借りてきた次第です。

 この本の著者の西谷さん(バブル崩壊長銀総研からトヨタ自動車に転職)のトヨタ自動車とロシアでの経験を通じて、①ロシアという国の現在の有り様(歴史・文化・風土・価値観・政治体制・経済体制等)と、②現在、日本でトップのグローバル・カンパニーであるトヨタ自動車という会社の文化・価値観・思考等の一端と、③元会長・社長の奥田碩さんの人間的魅力を伝えているので、なかなか面白い本でした。私が、過去のサラリーマン時代に、アメリカや中国でやって来たことを思い出しながら、未体験ゾーンに出て行くとはこういうことだよね!と共感しながら読みました。

 ところで、先日、テレビ東京の「ガイアの夜明け20周年記念番組」を観ていて、ふと思いました。番組の中でユニクロ(ファーストリテーリング)の柳井会長兼社長が、「当社は世界を目指します。日本から出たくない人は、当社には要りません。」と言い切っていました。グローバル・カンパニーを目指す経営者なら、当たり前の発言だと受け止める一方、単に、「本人に上昇志向や発展志向がない人は要らない。」と言っているのならそれはそれで筋が通っているのですが、本人のやる気以外の事情(例えば、介護、子育てなど)で、必ずしも上を目指せない人たちや身体障害・精神障害の人たちは、どこで働くのかな?との疑問が湧きました。確かに、強い組織を作るには、足手まといを排除するという考え方は一理あります。

 ユニクロのような世界で戦って生き残りをかける(途上にある)強い会社は、このような弱者の置かれている立場をどう考えているのかな?トヨタ自動車ぐらいになると、弱者も取り込む一種の余裕もあるのかなあ?日本企業がバブル崩壊後、沈んだままになっているので、もう一度、元気を取り戻して欲しいのは山々ですが・・・。

 例えば、高校野球高校サッカーの強豪校は、素質のある選手を集めて鍛えて、そのなかからレギュラーを選抜して強いチームを作る訳ですが、そこで努力が及ばず補欠に回ったり、怪我や病気で競技を断念したり、最初から、そのような集団には入れない普通の人たちも、下手の横好き(失礼)でスポーツをやっていたりする点にも目が向けられていて、幸せに生きていける(極端に言えば、存在そのものを否定されない)社会とは、どのような社会なのかなと思う、今日、この頃です。

 

(お知らせ)

大阪府社労士会のWebsiteに「働き方改革に関する臨時研修の録画配信をスタートしました(~5/9)」という記事が載りました。私はZoomセミナーを受講しましたが、内容の充実したセミナーでしたから、皆さんに、視聴をお勧めします。特に、杉原講師の「同一労働・同一賃金」の後半部分は、特定社労士試験第1問に出題されるかもしれない論点の解説になっていて、受験勉強にも役立ちそうでした。

 

第1回試験問題の解説(その1)

 第1回から第17回まで変わらない出題形式の概略は、次のとおりです。

1.第1問(紛争事例問題)配点70点と第2問(倫理事例問題)配点30点の大きく2つの設問があります。

2.第1問は、小問(1)~(5)、第2問は(1)と(2)に分かれています。

3.第1問は、長文の1つの事例について5つの小問で質問してきます。

4.第2問は、小問(1)と(2)が別の事例の時も、事例は1つで違う角度から質問してくることもあります。

 原始的という表現が適切かどうかは分りませんが、最近の複雑で細かい論点を質問してくるパターンの原点になっているのが第1回なので、どのような試験を受けるのかを理解するために、まずは、第1回の過去問を解いてみたいと思います。併せて、質問への回答の仕方についても、少し頭出しをしてみたいと思います。

 第1問(紛争事例問題)を解くために読んでいただきたい基本書としては、東大教授菅野和夫著「労働法 第十二版」2019(令和元)年11月30日第12版 弘文堂法律学講座双書(今後、「菅野本」と略称します。)を挙げます。今後、このブログでは、読者が菅野本を持っているという前提で解説をしていきます。昨年は、読み易くて分かり易いので弁護士安西愈著「トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識【十四訂】2013年9月15日十四訂版中央経済社も使いましたが、試験対策用に書かれた本ではなく、重要な論点の解説が不足しているので、本年は使いません。また、全国社会保険労務士連合会から送られてくる中央発信教材も届くのも8月末である上に基本書や参考書として見たときの出来映えが「イマイチ」なので、当面触れません。加えて、高橋和之他代表編集「法律学小辞典【第5版】」2016年3月20日発行有斐閣(今後、「法律学小辞典5」と略称します。)も時々参照(ネット検索では不十分です。)しますので、ポケット六法と併せて、これも入手しておいてください(その前に法学概論と民法の基本書を熟読してください。)。

 全国社会保険労務士連合会のWebsiteから過去問と出題の趣旨を入手して読まれている(少なくともこの記事を読みながら参照できる)という前提で、これからの解説を進めさせていただきます。

 いきなり問題を解いても、何をやっているのか分りにくいでしょうから、実際の問題の前に、第1問(紛争事例問題)対策としての法的論点について説明します。

 労働法と労働紛争解決の方法の基本書を通しで読んでみても、なかなか頭に入らないというのが、現実かなと思います(私は、第16回の受験勉強のときに、そうしてはいませんが、遙か昔に法学部の1回生のときに経験しました。)。

 そこで考えました。17回分の第1問の過去問には、1回の試験で2~3の論点が含まれている(その中の最重要論点の見極めが大切)ので、第1回から順番に登場する論点(例えば、整理解雇の4要件)について、基本書の関係部分を示して読んでもらうようにしていけば、最終的には基本書の全体像は把握出来るし、出題されそうな論点はカバーできるのではないかと(各回の論点は、後日書きます。)。

 もちろん、過去問では問われていない重要論点もいくつかあります。例えば、第16回の能力担保研修のテーマになっていた「名ばかり管理職の未払い時間外手当」、コロナ禍で話題になっている「内定取消」、「働き方改革」が引き起こしたマイナス面などが考えられますが、これらについても関連する論点のところで説明するか、そのチャンスがなければ(後日)まとめて説明します。

 実は、第17回試験のヤマハリとして、昨年4月26日のブログの記事に「有期雇用契約の雇止めや派遣切りはコロナで頻発しているので、過去から繰り返し問われていますが、要注意ですね。」と記載したのですが、まさに「有期雇用契約の雇止め」が出題されて驚きました。

 老婆心ながら、過去問を解くときに気を付けなければならないのは、最近の判例の傾向として(一概には言えませんが)使用者側に厳しくなりつつあるので、過去問の当時と現在では、勝敗の結論が変わっている場合がある点です(法改正で変わっているものもあります。)。よって、過去問の当時に書かれた模範回答と解説が、今では当てはまらなくなっていることがあることを頭の隅において、既存の過去問集などの解説を読んでください。

 ところで、論点、論点と連呼していますが、一体、特定社労士試験に出題されてきた論点のイメージが湧かないと思われる方も多いと思われるので、各回の説明の前に、ここで大雑把に説明しておきます。

 最大・頻出のテーマとして「解雇」があげられます。「解雇」を細分すると、①普通解雇、②懲戒解雇、③整理解雇(例、第1回)、④諭旨解雇、⑤試用期間満了時の解雇(例、第16回)、⑥希望退職(肩たたき)、⑦雇止め、⑧内定取消(解雇類似)、⑨派遣切り(解雇類似)、⑩退職の意思表示の撤回(解雇派生)などになります。

 第1回第1問小問(1)の解き方の頭出しを少し書きます。「解雇」の論点を検討する際には、労働契約法第16条(解雇)「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」が出発点になります。同法同条は、判例で確立された解雇権濫用法理を制定法化したものであり、解雇権濫用法理の考え方は、まだ生きています。よって、(同法同条が直接適用されるかどうか不明で)後述の法的三段論法で何を規範として採用するかに迷ったら、この解雇権濫用法理の「客観的に合理的な理由を欠くか?」と「社会通念上相当であると認められるか?」を使って、「使用者は解雇権を濫用しているので当該解雇は違法で無効である。」とするか、「・・・濫用には当たらないので適法で有効」とするという最後の手があるということを覚えておいてください(注)。

 

(注)解雇権濫用法理の詳細な説明については、菅野本P784~P789(1)解雇権濫用法理の明文化(2)解雇の合理的理由・概説に記載されています。ここでは、これら4ページを読んでおけば十分です。もっと細かい論点について記載された箇所については、もっと先で勉強していただきます。法律学小辞典5のP80「解雇」、P87「解雇権の濫用」およびP88「解雇権制限法」も参考に読んでおいてください。

 

 セクハラ・パワハラ等の「不法行為」、サービス残業、固定残業代、名ばかり管理職等の「時間外手当関係」、賃金・退職金の一方的減額等の「労働条件の一方的変更」、勤務地限定・職種限定労働者等を中心とする「配点・出向命令」なども繰り返し問われています(注)。

 

(注)ここ数年の法改正(労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働者派遣法、女性活躍推進法等)が、労働者が「介護をしている」、「女性である」、「子育てをしている」などのという事情を考慮して、特定社労士試験の第1問(紛争事例問題)の過去問の回答にどのような影響があるのか?とか、「働き方改革」(働き方改革推進法、労働時間等設定改善法等)がどのような新しい論点を生じさせていて、どのように解くべきかいう難しい課題については、先で個別の過去問を解くときに解説します。

 

 さて、紛争事例を解いて行くには、次の「法的三段論法」を用います(出題されている小問はこのプロセスを小分けしたものであると考えられます。)。

 

大前提

要件→効果(法命題)

小前提

事実→要件(事実へのあてはめ)

結論

事実→効果(具体的な価値判断)

 簡単に言い換えると、次のようになります。

① 規範定立(その論点を解決するぴったりの要件を選ぶ。)

② 事実のあてはめ(その要件に事実があてはまるかどうかを検討する。)

③ 結論(事実が要件を満たしたから適法・有効、満たさなかったから違法・無効と判断する。)

(注)だから、論点ごとに違う要件を覚えておく必要があります。それと、各要件に事実を上手くあてはめる訓練も必要です。

 

第1問小問(1)

 上述の法的三段論法に、第1問小問(1)の「Y社によるXの解雇が適法・有効であったかを判断する」という出題にあてはめてみます(話を極端に単純化します。)。

 まず、本問では、Y社がXを解雇した理由は、Y社の経営悪化による全社的人員整理の一環ですから、大前提を「整理解雇の4要件(要素)」とします(注)。次に、小前提でこれら4要件に会社側の(Xを整理解雇するまでの)事実にあてはめてみます。最後に、Y社の一連の行為等が「整理解雇の4要件(要素)」を満たすから解雇は適法・有効とするか、または満たさないので違法・無効とするかのいずれかの結論を導き出します。

 第1回特定社労士試験の第1問は特異で、小問(1)でこの整理解雇の4要件(要素)そのものを書かせていますが、第2回特定社労士試験以降の第1問では、この要件を書かせるというスタイルはなくなっています。代わりに、小問(4)か(5)で結論の法的見通しを書かせる際に、使った要件のキーワードをちりばめるように求めています。(繰り返しになりますが)よって、重要論点を解くために必要な要件の暗記と事実のあてはめの訓練は、試験対策として必須です。

 

(注)以前、解雇で困ったら「解雇権濫用法理」を使うと書きましたが、整理解雇の場合には、整理解雇のために裁判例で確立された、より厳格なルールである「整理解雇の4要件(要素)」を使います(満たせば整理解雇は適法・有効)。それは、①人員削減の必要性、②解雇回避義務、③被解雇者選定の妥当性、④整理手続の妥当性の4つの要件(要素)です。菅野本P793-P800(5)整理解雇にもっと詳しく説明があります。

 

 以上の検討から、第1問小問(1)の回答例を書くと次のようになります。

 

① 人員整理の必要性(企業の合理的な運営上やむを得ない措置)

② 解雇回避努力義務(配転、出向、希望退職の募集等の実施)

③ 被解雇者選定の妥当性(客観的で合理的な人選であること)

④ 整理手続の妥当性(納得を得るための説明・説得、誠実な協議等の実施)

 

 小問(3)以下では(小問(2)は異質)、これらが適切に満たされているかいないのかを、両当事者がそれぞれの立場から主張(Xは不十分と言い、Y社は十分と反論する)立証(それぞれ主張を基礎付ける事実を並べる)という争いがなされているプロセスについて質問を受けます。

 第1回特定社労士試験の第1問で問われている論点は、(1)整理解雇の有効性と(2)勤務地限定特約のある労働者の当該勤務地が廃止になる場合の有効性の2つです。本問では、(2)の論点については、(1)の論点の「整理解雇の4要件(要素)」の中の1つである「解雇回避努力義務」へのあてはめとして登場します(勤務地限定社員のために会社はどこまでしなければならないか。)。通常、勤務地限定特約の論点は、労働者による「配転・出向命令の拒否」の場合に問われる論点ですが、本問では、(ここで捻りが効いていて)逆に使用者側が配転・出向を検討して雇用を維持する努力義務があって、それを実行したかと問いかけられているという特異な設例です。第1回から、結構難しい出題だなと思います。

 したがって、まず、勉強していただきたいのは、整理解雇の4要件(要素)であり、菅野本P793-800「(5)整理解雇」が直接の該当箇所となります。ただ、整理解雇を含む解雇全体の説明文を読む方が理解がし易いので、菅野本はP775~「第7節 解雇」から読まれることをお勧めします。ここで気を付けて読んでいただきたいのは、P706中の「問題は、職種・勤務地を限定された場合であるが、この場合も、直ちに配転や出向措置を不要とするのではなく、解雇回避のための努力を求めるべきであろう」という箇所です。これが小問(3)と(4)を検討する際の基準になります(予告しておきます。)。

 勤務地限定特約そのものの論点がどのようなものか興味の湧いた方は、菅野本のP727-P735「1.配転」の中にあるP730-P731「(イ)勤務場所の限定」を読んでください。ちなみに、第10回特定社労士試験で、勤務地限定特約と整理解雇についてが最重要論点として問われていますので、第10回の過去問の解説のときに、もっと詳しく説明する予定です。

 法律の勉強をしたことのない人には、いきなり、かなり難しい話になってきたのではないかと思います。そう感じた方は、法学概論と民法の勉強をしっかりしてから、読み直してください。まだまだ試験本番まで時間はありますから、基礎からしっかり勉強しましょう(急がば回れ!です。)。

 次回は、小問(2)から解説します。

 

追伸

 藤田孝典著「コロナ貧困 絶望的格差社会の襲来」2021年8月15日毎日新聞出版発行を読んでいて、今回のテーマになっている「整理解雇の4要件」に関する記載を見つけたので、紹介します。この事例での会社側の整理解雇は、果たして、適法・有効か?それとも違法・無効か?考えて見てください。

P182―P184*******************************

 ダイヤモンド・プリンセス号、従業員の整理解雇の交渉例

 (略)

 その元社員3名が8月7日、解雇取り消しを求めて会社と日本法人社長を訴える裁判を起こした。

 提訴側の代理人弁護士は、「『整理解雇4要件』を十分に満たしていない。特に雇用調整助成金や持続化給付金を申請しないなど、解雇回避努力が尽くされていない」と主張した。

 法廷闘争のポイントは、以下の「解雇4要件」を満たしているかどうか。この要件はすべての労働者に適用されるので、ぜひ覚えておいて欲しい。

 (4要件略)

 参考までに、提訴前の団体交渉時の会社側弁護士の主張も記しておきたい。これほどの詭弁を弄してまでも、会社側は元従業員の主張を退けるのかというケーススタディにもなり、対策を講じる際に役立てることもできるだろう。

雇用調整助成金を活用するよう原告は要求したが、会社側は「焼け石に水」「国民の税金を、そんなムダなところに使うべきではない」などと述べて拒否。

・コロナ禍の厳しい状況では、今後必要な人材と雇用を維持できない人材とで、会社には当然線引きがある。

・ここは法廷ではないから、4要件に会っているかどうかなど興味がない。一流上場企業の通例で有り、今回のような中小企業には当てはまらない。

・4要件の1つが存在しなければ解雇は無効であるとするような考え方は時代錯誤。

・日本人はひとつの会社にこだわりすぎる。これをチャンスだと思え。

***************************************

(注)2点驚きました。業績不振による整理解雇の場合の解雇回避努力義務の中に、雇用調整助成金や持続化給付金の申請を行うことが含まれるとしたら、特定社労士としては、整理解雇を行おうとする使用者に対して、事前にそれらの申請をするように勧めなければならないことになります。また、整理解雇の4要件は、中小企業には当てはまらないとか、それは時代錯誤であるとか主張する弁護士がいるのですね(あっと驚く為五郎~!ゲバゲバ・ピー!古い!)。

  特定社労士試験第1問(紛争事例問題)で、これと似た設例が出題されたときには、参考になると考えて書いておきました。

 

 もう一つ。月刊社労士3月号P51「多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書案」という記事を読むと、現状の問題点が書かれています。これは特定社労士試験第1問(紛争事例問題)の付随論点として問われる可能性があるので、熟読しておいてください。