TokuteiJuku’s blog

特定社労士試験の勉強と受験

特定社会保険労務士の仕事とは?

 Wikipediaで、「特定社会保険労務士」を探していただければ、説明が載っています。良く書かれていますが、データが古いのが難です。

 特定社会保険労務士は、個別労働関係紛争の当事者が、都道府県労働局の紛争調整委員会や民間ADR機関にあっせん申請等を行う場合(また、あっせん申請等の相手方となった場合)において相談に応じ、また代理人として代理業務を行います(特定でない社会保険労務士にはできません。)。なお、個別紛争解決手続代理業務には、紛争解決手続と平行して行われる和解交渉、和解契約の締結が含まれますが、特定社会保険労務士であっても、紛争解決手続の開始前に、代理人となって事前交渉することは認められません。ここで代理業務を受任できる事件とは、次のとおりです。

 

  • 個別労働関係紛争解決促進法に基づき都道府県労働局が行うあっせん手続の代理
  • 男女雇用機会均等法に基づき都道府県労働局が行う調停手続の代理
  • 育児介護休業法に基づき都道府県労働局が行う調停手続の代理
  • 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律に基づき都道府県労働局が行う調停手続の代理
  • 個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせん手続の代理
  • 個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理(紛争価額が120万円を超える案件は弁護士との共同受任)

 

 太字にしておいた部分を見ていただければお分りになると思いますが、上の5つは行政機関が行う手続で、最後の1つが、民間(社会保険労務士会等)が行う手続です。これら以外にも司法(裁判所)が行う労働紛争解決システムがあり、訴訟や仮処分以外に、特に最近申立件数が多くなってきている(平成18年4月から運用が開始された)労働審判制度があります。残念ながら、いまだ、特定社会保険労務士であっても司法の場への参入はできておらず、これらの手続の代理業務はできません。

 特定社労士試験の倫理事例問題では、通常、社会保険労務士法第22条2項各号に定められた依頼者の仕事を受任できない場合への該当性から、他の条項等を考慮しながら受任の可否とその理由を検討していくのですが(この解法のテクニックについては後日解説します。)、第9回(平成25年度)は異質な論点が登場しています(他にも派遣社員の派遣先・元との関係、完全親子会社の一体性などの例もあります。)。それは、弁護士法第72条に定められた非弁活動の禁止と特定社会保険労務士の受任の可否の問題です。

 この過去問は、特定社会保険労務士社会保険労務士法の定めや倫理規範によって、受任を断るべきか否か、という問題以前に(入り口の手前で)弁護士法で、受任が禁止されている場合に該当しませんか?と問うています。倫理事例の問題が、だいたい同じパターンになってきたので、今後この種の問題が出題されるようになるかもしれない(既に1回でていますが)ので、要注意です。社会保険労務士法を知っているだけでは解けませんから。

 ちなみに、この弁護士法第72条の論点については、神奈川県弁護士会Websiteに「4 弁護士と社労士の違い」というQ&Aが載っていますので、それを見ていただければ懇切丁寧に解説されています。これです。↓

http://www.kanaben.or.jp/profile/lawyer/lawyer04/index.html

 

さらに、茨城県社会保険労務士会Websiteに、「社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)」というタブがあり、そこに次のQが載っています。

社会保険労務士は、例えば労働者の賃金未払い等の問題について労働者から依頼があった場合に、労働者と共に、あるいは単独で事業所に行って、労働法関係の専門知識を生かして事業主に対し賃金を払うように主張、交渉等をすることはできますか。」

Aは、ご自身でお確かめください。→ https://www.ibaraki-sr.com/FAQ

 余談ですが、「活用しよう 労働委員会 理論と実践 Q&A」大阪労働者弁護団・編 耕文社、という本を図書館で借りてきて読みました。これは上記の手続の4番目の労働委員会による不当労働行為救済手続(要するに、労働組合活動に対する不当労働行為に関する紛争がメイン)について、申し立ての仕方から、戦い方から、和解の仕方まで(その他諸々)について、実務的に解説されていて非常に興味深く読みました。しかし、皆さんの特定社労士試験の受験には、ほとんど関係ないと思われるので、今はお薦めしません。実務で要るときが来たら読んでください。2007年の初版から改訂されていませんので、もし、将来読まれるなら改訂版が出版されているかどうかを確かを確かめてください(老婆心ながら、爺ですが。)。