TokuteiJuku’s blog

特定社労士試験の勉強と受験

第19回(倫理)について質問を受けました。

 試験から2か月が経過し、発表まで1か月余りとなったので、そろそろ受験生はそわそわしだしたものと思います。実際、模範解答や採点基準が公表されておらず、毎年ボーダーが55点で合格率が5割前後と言う、合否の判断が極めてブラックボックスにある上に、第19回は(おそらく)今までで1番難しかったと思われるので、受験された皆さんの不安は想像するに大変なものだと思います。

 ところで、塾生から、某雑誌の模範解答に第2問(倫理)の小問(1)(2)に私と違う答えが書いてあるが、どちらが正しいのか?との質問を受けました。

 まず、小問(1)です。以前も書いたとおり、受任の予約をしているから、社労士法22条2項に触れて受任できないという解答は(理由としては)×です。

問題は、この甲とBの会話が、社交辞令の範疇から一歩も出ず、二人の会話の言葉と雰囲気と周囲の状況が、Bが甲に対して何も期待していない状況だったのか、それとも甲に対して若干は受任してもらえるだろうという期待を抱かせていたのか、または、周囲の人が二人の会話を聞いて、どう評価したかの判断の問題です。

 設問で与えられた情報から、単なる社交辞令だから、社労士法22条2項に触れることはないし、守秘義務違反にもならないし、受任しても構わないとビジネスライクに判断することは可能だと思います。その場合、結論は受任できるになります。これでも十分合格点になると思います。

 しかし、私が不思議に思うのは、①商工団体の立食パーティで、初対面の甲に対して、立ち話で従業員から違法解雇の損害賠償請求の内容証明郵便が届いたことを打ち明けて、労働局のあっせんになったらよろしくとまで依頼することがあるのか?②甲は事件の当事者が誰か?や不当解雇かどうかも分からない段階で、「わかりました。こちらこそよろしくお願いします。」と即答することがあるのか?の2点です。

 私の経験だと、事件が起こりそうで弁護士を探す際には、まずは手駒の中から(利益相反とスケジュールを勘案して)頼めそうな弁護士をピックアップして、仕事の(口頭で)予約契約を締結するし、弁護士の方も、将来、もっと重大な案件の受任に支障がると困るので、簡単に予約契約の締結に見える(聞こえる)ような返事はしないのですが・・・。本当に委任・受任の予約契約の交渉なら、もっと本格的な準備をして場所を選んでなされるはずだから、この場での会話は社交辞令の範疇内のことととらえて構わないという評価・判断も不合理だとは言えないと思いはするのですが、・・・。

 そもそも論として、仮にBがそのような会話をしたとして、甲はどう回答すべきだったか?を考える訳です。「個別の案件の受任については、実際にあっせんが申し立てられた時点で、利益相反守秘義務の問題もありますので、関係者しかいない場所で、ゆっくりお話を伺ってから判断させていただきます。」ぐらいの言い方が普通の反応の仕方だと思います。いかにも仕事欲しさに、ダボハゼのごとく即受諾してしまうという態度は、社労士の品位を下げる行為だと思いますし、私がBの立場で甲の返事を聞いたら、「こんな仕事に飢えた社労士は、仕事がなくて、きっと金に困っているだろう。」と考えて、絶対に代理人に選任したりはしません。世の中には、有り余るほど弁護士と社労士がいるので、勝つためには優秀な代理人を選任するべきだと考えるからです。

 ですから、このような返事をBにしてしまった甲が、Cの代理人を引き受けても、事実上Bは困らないだろうとは思うのですが、Bや、その横で今回の会話を聞いていた人が、あの甲は軽率だし、仕事に飢えているんだと考えたり、言いふらしたりする可能性があることを考えると、Cが相談に来た時に、甲はまずBに先日の会話のことをBに連絡してから、BとCのどちらの代理人になるかを判断すべきだと考える訳です。そうすれば、Bからも、この特定社労士は律儀で信用できる人だと思われるはずです。で、その根拠は、このままCの代理人を受任すると「社労士の品位を害するとか、誠実さに欠けるとか、信用を傷つけるとか、公正さに欠けることになるとか」が考えられる訳です。

 ここから先の詳しい解説は、11月28日のブログの記事を読んでください。

 

 次に、小問(2)です。これも以前に書いたとおり、双方代理になるから受任できないという理由は×です。社労士法22条2項3号とただし書のセットで、「他の事件」と考えて受任できるという理由も、同一事件なので×です。

 問題は、弁護士法22条(非弁行為)の前に、社労士法22条2項1号に抵触するので受任できないと言えないのか?という点です。

 設問をよく読んでください。第1回期日と第2回期日の間に、相手方D社の代表者からD社の代理人として行動して欲しいと頼まれているのであって、調停手続の代理人になって欲しいと頼まれている訳ではありません。もしそうなら、労働局にD社の代理人になりますとの代理人許可申請をする必要が生じます。その許可申請をしたらどうなりますか?労働局の窓口で、社労士法22条2項1号に抵触するから却下されるでしょう。そのような馬鹿な提案をD社の代表者が、甲にしているように問題文から読み取れますか?

 結局、この小問は、改正後の民法108条(自己契約及び双方代理等)を理解していますか?その後ろに弁護士法72条(非弁行為)が控えているのが分かっていますか?と問われているのだと考えます。

 小問(2)は、小問(1)ほど悩ましい問題ではないと思います。