TokuteiJuku’s blog

特定社労士試験の勉強と受験

第11回第1問を使ったパワハラの論点解説(その2)

 前回の続きを、2021年6月23日・25日・27日の記事を一部修正して書きます。ものすごく量が多いですから、暑さに負けずに頑張って読んでください。

 

第11回(平成27年)第1問の論点(その3:職場のいじめの法的責任)*********************************************

 多少、読みにくいとは思いますが、本問のテーマは射程範囲が広いので、我慢してお付き合いください。

さて、パワハラ、セクハラなど職場のいじめについての法的責任には、どのようなものがあるか。まず、水谷英夫著「職場のいじめ-「パワハラ」と法-」信山社2006年12月第1版の一部(P104)を引用して紹介します。重要なキーワードがたくさん含まれているので、じっくり読んでください。

<P104>**********************************

 『職場において「いじめ」や「パワハラ」等が行われ、それが社会的にみて相当性を欠くだけでなく、法的に見ても違法不当な行為と評価される場合、刑事、民事等の法的責任が問題とされることになり、このようなものが裁判例などとして登場することになる。これを法的責任の性質にしたがって分類すると、①当該個人の刑事責任が問われたもの、②当該個人が企業秩序違反として懲戒処分等の対象とされたもの、③当該個人もしくは使用者の民事責任(不法行為もしくは契約責任)が問われたもの(労災も含む)に分類することができよう。

 職場におけるいじめは、法的にみると個人の身体や名誉、プライバシー等の人格権や職場秩序に対する侵害であり、それが著しく社会通念を逸脱している場合、名誉毀損、暴行、傷害、脅迫、強姦、侮辱罪等の刑罰として処罰することになるが、さらに近年女性に対する職場の内外における性的被害の深刻さと広範さが認識されるようになってきたことから、性犯罪、虐待等に対する規制が強化されていることは注目されよう。

 次に、企業や大学等の構成員が、他の構成員やそれ以外の第三者にいじめ行為を行い、それによって「被害者」の人格的利益や職場(教育研究)秩序を侵害した場合、職場秩序違反等としての懲戒処分が課されることがある。もっとも、職場のいじめは一般に、上司等が地位を利用する等しての心理的暴力を手段とすることが多いことから、直接的な労働提供義務違反が問われるというよりは、労働契約上の付随義務としての職場秩序遵守義務に関するものが問題とされることになろう。

 さらに、職場でいじめを行った者(加害者)は、民事上不法行為責任を問われることになり、その際の不法行為責任の成立要件としては、加害行為の違法性、損害の発生と行為の因果関係、加害者の故意または過失が必要とされることになるが、精神的被害が中心となるいじめにおいては、これらはいずれも激しく争われることになる。』

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 過去問で問われたことはないのですが、例えば、職場で暴力事件を起こして相手にけがをさせた従業員を懲戒解雇にするということも、使用者による労働者に対する法的責任の追及としてはあり得る訳です。その際、懲戒手続に不備があるとか、懲罰の内容が厳しすぎるとかいう理由で、懲戒処分を受けた労働者(例えば、加害者である上司)が使用者(会社)を訴える(例えば、復職や損害賠償を請求して)ということも、この職場のいじめの問題の法的責任の範疇に含まれる(よって、出題の可能性がある)ということは覚えておいてください。

 上述の法的責任の中で、特定社会保険労務士試験で問われる個別労働紛争は、個人対個人の争いを対象としているのではなく、労働者対雇用主(使用者)の争いを対象としているので、設問のテーマとしては、雇用主(使用者)の責任(以下、民法の用語にならって「使用者責任」といいます。)について労働者が追求するというスタイルになります。

 そこで、再度、水谷英夫著「職場のいじめ-「パワハラ」と法-」信山社2006年12月第1版の一部(P149)を引用して紹介します。重要なキーワードがたくさん含まれているので、じっくり読んでください。初めて見る用語は、法律学小辞典5でその意味を調べてください。

<P149>***********************************

 『企業の従業員が他の従業員などに「いじめ」行為を行い、それによって被害者の人格的利益等が侵害された場合、使用者である企業の法的責任が問われることがある。このような場合、使用者は、当該行為が使用者自身の行為と評価される場合には、自ら不法行為責任もしくは使用者責任(709,715条)が問われ、さらにいずれの場合にも使用者は労働契約関係もしくはそれに類似する社会的接触関係における信義則上の職場環境保持義務を怠ったとして債務不履行責任が問題とされることがある(415条)。

 使用者は、雇用契約における信義則上の付随義務として、労働者に対して、物理的に良好な職場環境を整備するとともに、精神的にも良好な状態で就業できるように職場環境を整備する義務(職場環境配慮義務)を負っており、使用者はこのような義務に基づいて、労働者の就労を妨げるような障害(労働者が他の労働者に対して職場内で暴言、暴行、卑猥な言動、いじめ、「職場八部」等)を服務規律で禁止して、発生を防止すると共に、これらの非違行為が発生した場合には直ちに是正措置を講ずべき義務を負っており、使用者の「いじめ防止義務」はこのような義務である。したがって使用者は、かかる義務を怠って他の従業員や第三者に人的・物的損害を与えた場合は、損害賠償等の法的責任を負うことになる。

 職場いじめに対する使用者の義務内容としては、事前措置があり、具体的には、「実体的」規定と「手続的」規定の整備が要請される。またいじめが発生した場合に使用者に要請されるのは、誠実かつ適切な事後措置であり、その具体的内容としては、事実調査・被害拡大回避・回復義務並びに再発防止措置等が要請されることになる。

 更に職場「いじめ」の使用者責任を「いじめ」の発生原因によって分類した場合、前述したとおり、使用者の意思に基づいていわば「職場ぐるみ」で行われるものと、使用者の意思とは無関係に職場の上司や同僚などによって行なわれるものとがあり、それによって使用者責任の根拠や範囲に違いがでてくることになる。』

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使用者(雇用主)は、雇用契約に含まれる信義則上の付随義務としての職場秩序遵守義務を負っていることから直接導き出される責任が存在し、使用者の義務内容に事前措置義務と誠実かつ適切な事後措置(6月18日の記事で2012年12月のワーキング・グループの報告として具体的に記載)が求められると書かれています。2006年に出版された同書に書かれていることをより具体化して、以前記事で紹介した「職場におけるハラスメント関係指針」(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号)に事業主が雇用管理上講ずべき措置として詳細に記載されています。再度、見返しておいてください。

 ここで、使用者責任を追及する場合の4つのパターンがあることを、再度、水谷英夫弁護士の本から引用して(P156)、紹介しておきます。

<P156>***********************************

 『4つのアプローチの相違

  職場いじめに対する使用者責任の成立要件は、①~④のアプローチにより微妙に異なっている。すなわち、

① 民法715条使用者責任を法的根拠とする場合は、被用者によるいじめ行為が、使用者の「その事業の執行について」なされたものか否かが、問題とされることになろう。

② 民法709条不法行為を法的根拠とする場合は、使用者の「注意義務」(=いじめ防止義務)の内容・程度が、問題とされることになろう。

③ 民法415条債務不履行を法的根拠とする場合は、使用者の責に帰すべき理由により加害行為がなされたことが要件とされ、ここでは使用者の予見可能性・帰責事由(=職場環境配慮義務)が、争点となる。

④ 社会的接触関係における職場環境配慮義務を法的根拠とする場合も、③と同様の義務違反行為が最大の争点となることになろう。』

(注)太字の括弧書き3箇所は、私が加えました。

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 ここで、④に書かれた「社会的接触関係」について、若干補足します。例えば、請負関係においても、実際上それが雇用関係に類似した従属労働または指揮命令関係がある場合には、③と類似の責任を負うと言うことです。さらに言えば、元請企業や派遣先企業と下請企業や派遣元企業の被用者(労働者)との間のように、法的には直接の契約関係のない場合にも、事実上雇用に類似した指揮命令の関係があるときは、元請企業や派遣先企業の職場環境配慮義務(安全配慮義務)の存在が求められて、労働者の保護が図られると言うことです。

 

 次に、ここに登場した民法の条文を書きます。

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(使用者等の責任)

第715① ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りではない。

② 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

③ 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

不法行為による損害賠償)

第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

債務不履行による損害賠償)

第415条① 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

② 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは債務の履行に代わる損害賠償をすることができる。

 一 債務の履行が不能であるとき。

 二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

 三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

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 実際問題、第1問で使うのは、加害者(例、上司)のパワハラ行為の責任を使用者(雇用者)に追及するための①(使用者責任)がほとんどで、使用者(雇用者)自体(の意思)による不法行為を問う②はほとんどないと思います。③使用者(雇用者)の職場環境配慮義務を問うというのは、例えば被害者が身体的に危険な状態に置かれていたような極端な場合を別にして、使用者(雇用者)にどのような配慮義務があったのかの被害者(労働者)による立証が難しく、従来、③による責任追及は難しかったのですが、以前に紹介した厚生労働省による一連の法改正(労働施策総合推進法)や指針(職場におけるハラスメント関係指針)の制定を受けて、使用者(雇用者)側にこのような義務があったという主張・立証がし易くなってきているので、今後は③による責任追及も増えてきそうです(④はまだまだでしょうか?)。

 加えて、最近増えてきている過労(自)死のケースのように、まさに職場の雰囲気や企業風土が原因のときには、「不法行為+使用者責任」構成より、「債務不履行安全配慮義務違反)」の方が、「会社ぐるみでいじめたじゃないか!」と主張する際には、しっくりくると思います。

 もちろん、あっせんや調停の申請書では、①使用者責任と③債務不履行を並列に請求することも、どちらかを予備的に請求することも可能ですが、特定社会保険労務士試験第1問では、主張を裏付ける事実を列挙させるという体裁をとるので、拾い上げる事実(例、怒鳴った、殴った、無視した、ルールを策定・教育した、苦情受け付け窓口を設置した等)としてはどちらにしてもあまり変らないという気がしています。

 例えば、加害者(上司)と人事部長の間で、被害者(労働者)を辞職に追い込むという合意があって、会社の意思として「いじめ」が行なわれたとして、そのことを被害者(申立人)からの主張事実として書くことは、①のアプローチであっても、加害者のパワハラの動機の事実および使用者(雇用者)の業務の範囲内であるという事実の証拠になる訳ですから、回答欄にその事実を書いたら正解になると思います(Y社が否定していたとしても。)。

 

第11回(平成27年)第1問の論点(その4:不法行為)***************************************************

 「その1」、「その2」、「その3」でやっと前置きが終わったので、第Ⅰ関門の「不法行為」に入ります(まだ、小問の解き方には入りませんが。)。

第11回は、上司によるパワハラが原因で、労働者が退職に追い込まれたので、使用者(会社)に対してパワハラによって生じた被害について損害賠償請求するという設問です。パワハラによる被害を法的に回復するという民法の問題になっているのと、令和2年4月1日から改正民法が施行されて、当時とは民法の説明に変更が生じているので、少なくとも、今、この問題を解いて理解するのは、過去問の学習のなかで一番難しいのではないかと考えています。なお、遅延損害金の話は、小問(1)のところで書きます。

 弁護士安西愈著「トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識[十四訂]中央経済社(以下「安西本」という。)P135には、パワハラが違法性を帯びる点について具体的に書かれているので、引用します。『労働者は、終業規則に服し上司等の業務命令については合理的で相当な命令である限り従う義務を負う。しかし、それが社会通念上相当な範囲を超えて合理的な理由のない過酷な肉体的・精神的苦痛を伴うものであったり、懲罰・報復等の不当な目的で行われたりする、いわゆる職場のいじめ、村八分的差別等不当性、不法性を帯びる場合に違法な行為となる。』

 菅野本P258には、職場のパワハラの行為類型として、『①暴行・傷害(身体的な攻撃)、②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)、③隔離・仲間はずし・無視(人間関係からの切り離し)、④業務上明らかに不要なことや遂行不能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)、⑤業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じられることや仕事を与えないこと(過小な要求)、⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)』が挙げられています。小問でパワハラ行為の具体的事実を箇条書することを求められることが想定されるので、これらの類型は覚えておきましょう。

 菅野本P258-259には上述の安西本P135の記述をより具体的に「(3)法的責任」として、『加害者である上司や同僚の被害労働者に対する身体、名誉感情、人格権などを侵害する不法行為責任や、企業の被害労働者に対する労働契約上の安全配慮義務違反の責任の有無の問題となる。不法行為責任の場合には、違法なパワーハラスメントについては、まず、その行為者である上司自身の不法行為責任(民709条)が認められ、この責任が使用者責任(民715条)として帰責される。』と記載されていますが、括弧内の前の文と後の文は、被害者による加害者への責任追及に関する法律構成について、とても重要なことを述べています。つまり、責任追及には、次の3つの法律構成があると言っています。これからの(民法の)説明の理解を容易にするために、下の箇条書の文中に太字で下線を引いた3つ+「信義誠実の原則」の合計4つの法律用語について、法律学小辞典5でその意味を調べてください。

(1)    加害者である上司や同僚の被害労働者に対する身体、名誉感情、人格権などを侵害する不法行為責任

(2)    企業の被害労働者に対する労働契約上の安全配慮義務違反の責任

(3)    その行為者である上司自身の不法行為責任(民709条)が認められ、この責任がその雇用者に帰される使用者責任(民715条)

 それでは、以上の(1)(2)(3)について、順番に説明します。ここには、前回の記事で紹介した水谷英夫弁護士の4つのアプローチの内の②使用者による直接の不法行為は含まれていません。菅野教授は、現実には責任追及の方法として極めてまれな②を省いたのかな?と考えています。

(1)「不法行為責任」の民法の条文は次のとおりです。

不法行為による損害賠償)

 第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 法律学小辞典5には、『2 一般の不法行為の成立要件 イ 加害者に故意・過失があること。ロ 権利侵害又は法律上保護される利益の侵害(違法性)があること[民709]。ハ 加害行為と損害との間に因果関係が存在すること[民712・713]。』と書かれています。

 法律学小辞典5で「故意」は、『(Ⅰ 刑法は省略)Ⅱ 私法上も刑法と同様、自分の行為から一定の結果が生じることを知りながら、あえてその行為をすることで、過失と共に不法行為を成立させる要件の一つ[民709]。故意と過失の区別に関しては、前者が認識又は予見した結果をあえて作り出すという心理状態であるのに対し、後者は認識可能性ないし予見可能性を前提にした注意義務(結果回避義務)の違反とされるが、不法行為の成立に関しては区別の実益はない、というのが一般の学説である。(後略)』と書かれており、「過失」は、『Ⅰ 私法 1意義 過失は、私法上の法律関係のいろいろな場面で一定の法律効果を生じ、あるいはそれに影響を与えるが、一般に(特に、民法709条の不法行為責任の要件としての過失につき)、自分の行為から一定の結果が発生することを認識できたのに(予見可能性の存在)、不注意でそれを認識しない心理状態と説明されてきた(心理状態説)。(後略)』と書かれています。

 難しく書かれていますが、簡単に言うと、「故意とは、わざとやった。」、「過失は、ついうっかりやった。」の違いだと考えておいてください。実際の設例には、例えば、上司による加害行為は、怒鳴る、机を叩く、殴る、突き飛ばす、酒を強要するなど、どう考えても故意にやっているとしか思えない行為の事実が書かれていますから、当該行為が故意か過失か?とか、過失になるような注意義務違反があったか否か?みたいなことは検討しなくて済みます(絶対とは言えませんが)。

 法律学小辞典5の不法行為の項の中に、『権利侵害又は法律上保護される利益の侵害(違法性)』について難しい説明が書かれていますが、特定社会保険労務士試験の第1問を解く場合には、要するに、被害者が損害(財産的損害か精神的損害か、積極的損害<財産の減少>か消極的損害<得べかりし利益>かを問わない。)を被っているという事実があるかどうかがポイントです。

 ここまでで、「加害者が故意で加害行為をして」「被害者に損害が発生したという事実」が必要と言うことまでは理解されたと思います。法律学小辞典5の「2 一般の不法行為の成立要件」には、加害者に不法行為責任を追及するには、これら故意と損害に加えて、故意と損害の間に相当因果関係が存在することまで被害者が主張・立証する必要があることが書かれています。法律学小辞典5の不法行為の項に3つ目の要素として『ハ 加害行為と損害との間に因果関係が存在すること[民712・713]。』が挙げられていますが、同書の「因果関係」の項を読んでいただければ、『Ⅰ 民法上、因果関係は特に損害賠償及び不当利得の分野で問題とされている。前者では、損害賠償の範囲は相当因果関係によって定まるものであって、民法416条が相当因果関係の原則を表現したものと一般に理解されており、後者では(後略)』と記載されています。よって、ここでは「相当因果関係」が存在しなければならないと言うことになります。法律学小辞典5でその意味を確認しておいてください。例えば、殴られてけがをしたり、継続的にいじめられて鬱病になったら、普通に考えれば相当因果関係が存在すると考えられますし、特定社会保険労務士試験で「加害者の行為」と「被害者の受けた損害」の間に相当因果関係の有る無しについて直接問われることも、その存在について悩むこともないと思います(絶対ではありませんが。)。

 極論を言えば、「加害行為があって、損害が発生して、両者に相当因果関係がある。よって、不法行為が成立する。」というのは、Xの言い分とYの言い分をよく読んで、社会常識の範囲で判断すれば、ほぼ間違いないと考えて構わないと思います。つまり、ここでは、難しい法律論よりも社労士としての社会常識が役に立つと考えてください。もちろん、今までの経験だけでなく、過去問に当たったりして、社会常識を特定社会保険労務士試験にフィットするように磨く必要はあります(実際、パワハラと教育的指導の限界事例が多く問われていますから)。今回の記事は、かなり法律論を難しく書いていますが、それは考えるときのベースであって、それを理解しておけば、問題を解く(限界事例を判断する)のは社労士(または社会人)としての経験と社会常識の豊かさです。

 これらに加えて、不法行為責任の成立を阻却する(成り立たなくさせる)事由(抗弁)について書きます。第1問の小問では相手方(Y社)の主張すべき事実の基礎になることがあります。法律学小辞典5P395から少し引用します。

 『抗 弁 民事訴訟において、原告の請求を排斥するため、被告が原告の権利主張・事実主張を単に否定・否認するのではなく、自らが証明責任を負う事実による別個の事項を主張すること。防御方法の1つ。』

 具体的には、正当防衛(攻撃を受けたから防御したなど)、緊急避難(他人の物から生じた急迫の危難を避けるためにその物を損傷した。民法720条2項)、危険の引受け(危険を承知の上でスポーツに参加するなど)等が考えられるので、民法の基本書か法律学小辞典5でその意味を調べて置いてください。

 以上で、パワハラ(加害行為)をした上司に不法行為責任を追及できるという所までは、お分かりいただけたと思います。次に、本問では、なぜ、加害行為を物理的には行っていない(行えない)使用者(会社という抽象的なもの)に責任を追及するのでしょうか。それは、一般的に考えて、個人(上司等)より会社の方がお金を持っているだろうから会社に損害賠償請求するパターンが多いからです。だから、個人の加害行為について使用者(会社)に対して責任追及する理論構成が必要になる訳です(このパターンがあることは前回の記事に書きました。)。

 これを可能にする理論が、①民法715条(使用者等の責任)と②民法415条(債務不履行による損害賠償)・民法1条2項(信義則:安全配慮義務)です。まず、民法の各条項(709、715、415、1②)を読んだうえで、(再度)法律学小辞典5で、「不法行為」、「使用者責任」、「信義則」、「安全配慮義務」の各用語を調べて見てください。これらの条文と法律用語は、非常に重要ですから、是非、覚えてください。次回以降、使用者(会社)に責任を負わせるための「使用者責任」と「安全配慮義務」について説明します。

 ところで、一冊で、経営側と労働者側と業界の話と日本企業の性みたいなものまで書かれている面白い本を見つけました。中川淳一郎著「電通博報堂は何をしているのか」星海社2017年5月第3刷です。まずは、本のジャケットに書かれている箇所を引用します。

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彼らは単なるモーレツサラリーマンであり、社畜である。

五輪エンブレム騒動、若手女子社員過労自殺・・・・・。いま、広告代理店に逆風が吹いている。ネット上には、「パワハラ、セクハラは日常茶飯事」「社員はコネ入社で使えない人間ばかり」など、虚実入り交じった悪評が連日書き込まれている。なぜ電通博報堂はこんなにも嫌われているのか。それは彼らが高利益をあげ、高い給料を得ている(とされている)にもかかわらず「何をしているか分らないから」である。長らく広告業界は、敢えて自分たちの仕事内容を開示せず、クライアントとの情報の非対称を利用して仕事を進めてきた。そのツケがいま、きている。本書は、博報堂出身の筆者がおくる真実の会社案内であり、業界案内である。』

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 この本は、高橋まつりさんの過労自殺の事件については、ほんの少ししか触れていません。そこではなく、日本の古い?大企業の体質(働かせ方、社風、社員の意識など)を元博報堂マンの著者が自らの経験と多くの関係者へのヒアリングを交えて分析してくれていて、以前紹介した野村正實著『「優良企業」でなぜ過労死・過労自殺が?「ブラック・アンド・ホワイト企業」としての日本企業』ミネルヴァ書房に通じる日本企業の内在する「働かせ過ぎ(ブラック)」の部分を、元サラリーマン(当事者)であった著者が、実話を多く(退職者を電通は「ヤメ電」と博報堂は「脱博者」)と呼ぶとか。)交えながら、具体的で分りやすく書いてくれています。20~30年前の大企業ってこんなんだったよなあ(アルアル)と思い出して、歳をとったなあと思う、今日、この頃です。蛍光ペンを引いた箇所はたくさんあるのですが、1箇所だけ引用して紹介しておきます。薄くて読み易い本なので、是非、ご一読してみてください。

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長時間労働の原因は非合理的な「信仰」にある

 また、本書の総括に近いところで、やはり「長時間労働」については書いておきたい。私は、1997年博報堂に入り、2001年3月に退社し、以後、フリーのライター・編集者・PRプランナーとして働いてきたが、これまでに最も働いたのはどう考えても会社員時代だったと断言できる。フリーの方が悶絶するようなブラック労働をすると思われるかもしれないが、間違いなく会社員時代の方が長い。今回は電通の社員が自殺するという事態になったものの、若者の長時間労働においてはどこも似たような面があり、これは広告業界の悪習と言えるものである。

 なぜ、そんなことになるのかといえば、大いに影響しているのが「所詮は下請け業者」である点だ。ネットでは電通が日本の政財界すべてを牛耳り、猛暑やゲリラ豪雨まで電通がしかけたといった「ぬえ」のような存在として扱われているが、実態として私が感じるのは、「客に対して忠義を尽くす社畜集団」という点だ。・・・中略・・・

 広告代理店の命運を握っているのが「営業」である。ときに「クライアントのポチ」のような言われ方をすることもあるが、私は彼らのことを大変尊敬している。広告代理店の中でももっとも「サラリーマン」っぽい部署だろう。』

 

第11回(平成27年)第1問の論点(その5:使用者責任)****************************************************

 前回、加害者(例、上司)の不法行為責任の説明をしました。もちろん、被害者(例、部下)は、当該加害者に対して直接損害賠償請求をしても構いませんが、実際は、使用者(会社)に対して使用者責任を追及するか、または当該加害者と使用者双方を相手方として損害賠償請求をする場合が多いと思います。なぜならば、当該加害者(大金持ちなら別)だけでは資力に乏しくて、仮に損害賠償金が認められても支払ってもらえない場合が多いからです。

 そこで、加害者の不法行為責任の主張・立証が成功したとして、使用者は、なぜ、どのような責任を受け入れて、被害者に対して損害賠償金を支払わなければならないのかが、問題となります。そこで登場するのが、民法715条(使用者等の責任)です。次に同条を書きます。

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 (使用者等の責任)

第715条① ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りではない。

② 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

③ 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

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 本条1項中の「被用者」とは「加害者となる上司等」を指します。実際に、使用者責任を負う、負わない、の分かれ目は、私が下線を引いた「その事業の執行について」当該加害行為(不法行為)が行なわれたかどうかです。例えば、加害者である上司のいじめ行為が、その業務の執行に関連しているなら、使用者(会社)に使用者責任が認められて損害賠償義務を負わされることになります。逆に、業務の執行に関連性しない、まったく私的な行為なら使用者責任はないことになります。この事実の見極めが、事実を拾い上げるときと法的判断の見通しを考える際に、重要になる訳です。

 ここで「その事業の執行について(民法の条文の意味)」が労働災害における「業務上の」と同義か否かが問題になります。色々調べましたが、よく分りません(たぶん民法の方が緩い)というのが結論です。ちなみに、菅野本P649には、「(2)事故による負傷・死亡の業務上の判断 (ア)「業務遂行性」と「業務起因性」の定式」に次のように書かれています。

 『労働者の負傷・死亡が何らかの事故によって生じた場合の「業務上」判断については、行政解釈では、「業務上」とは当該負傷・疾病・死亡の「業務起因性」を意味し、「業務起因性」の「第1次的判断基準」(要件)がその直接の原因となった事故の「業務遂行性」である、とされてきた。つまり、「業務上」の事故といえるかどうかについては、まずは「業務遂行性」の有無を判定し、そのうえで「業務起因性」を判定すべきもとされてきた。そして、「業務遂行性」とは、「具体的な業務の遂行中」という狭い意味ではなく、「労働者が事業主の支配ないし管理下にあるなかで」という意味であり、「業務起因性」とは、「業務又は業務行為を含めて[労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあること]に伴う危険が現実化したものと経験則上認められること」をいう、と定式化してきた。いいかえれば、「業起因性」における「業務」とは上記のような広い意味での「業務遂行性」(使用者の支配ないし管理下にあるなかで)を意味する。』

 労災事故の場合、(過重労働による)負傷・死亡という結果が、必ずしも職場で発生する訳ではなく自宅等で発生するので、そこまでを救済範囲に含めるという考え方を取る一方、パワハラなどの職場のいじめ行為の場所や場面(原因行為)が、会社の公式・非公式行事の職場外の飲み会や得意先の接待の場などであっても認められることから、(社会保険労務士として慣れ親しんだ)労災補償と同じ「業務起因性」や「業務遂行性」という用語を、小問(4)の「法的判断の見通し」を書く際に、安易に使わずに、「業務の執行について」とか「業務の執行に関連して」とか、一般用語を用いることをお薦めします。おそらく、出題者(採点者)は(特定社会保険労務士ではなく)弁護士でしょうから、法律用語の使い方が雑だと思われたら減点対象にされるかも知れません(老婆心ながら。)。

 同条1項ただし書には、使用者が被用者の選任および監督について相当の注意をしたときは、免責されると書かれていますが、(挙証責任が使用者側にありますし)現実に、この免責が認められることは、まれです。まあ、これで免責がバンバン認められるようだと、被害者(労働者)はたまったものではありませんし、被用者を雇用して事業を行なって利益を得ている使用者(これを「報奨責任」といいます)が(会社ぐるみの「いじめ」ではないとしても)逃げ得(儲け得)になるのも世間的には許されない気がします。

 ここで、同条3項に使用者から当該被用者への求償権が定められていますが、使用者(会社)にもいくらか責任を取らせるべきとの考え方から、いくら当該被用者(加害者)が全面的に悪くても、満額を回収できるということはまれです。まさか?使用者(会社)から、当該加害者(例、上司)を懲戒解雇にした上で、被害者に支払った損害賠償金の全額を当該加害者に請求するなどという事例は出題はないと思いますが、ゼロではないので、少し補足するために、平野裕之著「コア・ゼミナール民法Ⅳ債権法2契約各論・事務管理・不当利得・不法行為新世社2020年6月初版発行P225から、この求償についての判例の考え方を引用します。

<P225>**********************************

 『判例は、必ずしも報奨責任を制限の根拠とはしていないが、「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができる」と、信義則により求償権が制限されることを認めている。』

 これは、(使用者責任に限られない)不法行為に基づく損害賠償責任に伴って発生する問題であるが、被害者側に何らかの原因があって(加害者の悪さ加減とのバランスから)損害賠償金を減額する「損害賠償の調整」が必要になる場合があります。小問(5)で、妥当な現実的解決を図る提案を考える際に必要になることが考えられるので、少し説明します。

 使用者が主張する「損害賠償の調整」の方法としては、過失相殺(被害者の過失を使用者が援用)、被害者の身体的・精神的素因の斟酌などが考えられます。

 まず、被害者の過失によって被害が拡大した場合などに、被害者の過失に起因する部分の損害を加害者の使用者が減額する過失相殺(法律学小辞典5P123参照)です。『民法722条2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。』が根拠になります。

 次に、被害者の身体的・精神的素因(例、虚弱体質)が寄与して損害が拡大した場合に、賠償金の減額が認められる「素因減額」という考え方があります。前述の平野裕之教授の本のP200-201から、一部引用します。

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 『判例最判昭63.4.21民集42巻4号243頁)は、被害者の心因的素因が寄与して損害が拡大した場合に722条2項の類推適用を認めている。本判決は、2年分の治療費のみが相当因果関係にある損害であるとして制限した上で、その2年分についても、「身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができる」という一般論を宣言する(実際にも6割減額)。(略)被害者の既往歴も考慮される。』

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 ここで覚えておいていただきたいのは、まず相当因果関係の観点から損害賠償してもらえる範囲が決められて、次にその範囲内で過失相殺や素因減額がなされるということです。損害賠償の範囲に、2回絞りがかけられて、その順番は、相当因果関係が先に来るということです。

 最後に、水谷英夫弁護士の挙げた4つのアプローチの「③民法415条を法的根拠とする場合は、使用者の責に帰すべき理由により加害行為がなされたことが要件とされ、ここでは使用者の予見可能性・帰責事由(=職場環境配慮義務)が、争点となる。」を使って、使用者に直接債務不履行安全配慮義務違反)で責任追及(損害賠償請求)をする場合について述べます。まず、法律学小辞典5P8の「安全配慮義務」から少し引用します。

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 『Ⅰ 一定の法律関係にある者が、互いに相手方の身体・生命等を害さないように物的・人的環境を整えるべく配慮する信義則上の義務。(以下略)』

 『Ⅱ 労働関係における安全配慮義務は、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をすべき使用者の義務である。民間企業の使用者は、労働契約法5条に基づきその義務を負う(略)。』

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 使用者の安全配慮義務(職場環境配慮義務)違反=債務不履行責任を追及する場合、ネックとなるのが、①安全配慮義務の具体的内容を確定し、かつ、②使用者の当該具体的義務に違反している事実を証明する責任を被害者(原告労働者)が負う(因果関係の証明も)ということです。よって、この安全配慮義務違反構成で被害者(原告労働者)が加害者(使用者たる会社)の責任を追及するというのは、従来、中々難しかったのですが、厚生労働省からの具体的パワハラ対策指針等も公表されているので、今後は、これらを基準に物事が進められていくものと思われます。今後は、被害者による安全配慮義務違反構成の主張・立証は易しくなっていくのではないかと推測しています。加えて、過労(自)死のケースなどは、この法律構成の方がしっくり来ます。

 いずれの法律構成にしましても、特定社会保険労務士試験第1問で拾い上げる事実はほぼ同じだろうと思われますので、試験本番で、「加害者の不法行為+使用者責任」か、「使用者の安全配慮義務違反」か、で悩まないで大丈夫だろうと過去に書きました。ところが、この第11回第1問小問(1)は例外です。次回、詳しく説明しますが、「求めるあっせんの内容」で、両者の違いによって遅延損害金の起算点が違う(不法行為による損害の発生時か、期限のない債務の催告時か)ので、どちらの法律構成で行くかを選ばなければなりません。これは、かなり厄介な問題です。

 この第11回第1問は、不法行為使用者責任、信義則上の安全配慮義務、時効の起算点、法定利息による遅延損害金などの民法の論点が満載で、設例や質問の文章は短くて単純なのに、要求される法律知識が幅広いという難問だったと思います。よって、合格点、合格者数、合格率を保つために、採点は相当甘かったのかな?と邪推してしまいます。いずれにしても、司法試験のように規範の妥当性や合理性を論証させるのではなく、ただ、規範を覚えてそれに当てはまる事実を拾い上げさせるという出題形式なので、当てずっぽうで拾った事実を書いたとしても、(加点方式の採点だとしたら)ある程度の点数は稼げたのではないかと考えています。

 第11回で民法の知識を問う出題をしたために受験生のできが悪くて(受験者数も減少傾向だし)、その後出題者は、民法を避けて労働法の論点に絞ったうえで、難易度をあげるために設例の説明文を長文化して細かな論点を組み合わせるという方向に転換したのだろうと推測しています。だから、もう民法の論点を正面から尋ねられることはないだろうと安心していると、(改正民法施行から数年経ちましたし)突然、民法の論点を出題してくる可能性がありますから、民法の勉強も欠かせません(老婆心ながら)。

 民法の論点としては、詐欺、脅迫、錯誤などの瑕疵ある意思表示、意思表示の到達・撤回なども過去には派生論点として出題されていますが、この辺りを正面から問われると難問になると思います。

 改正民法施行後なので、今となっては悩む必要の無い論点が、本小問に関して1つありました。それは、商事法定利率のお話です。民法改正前は、商法514条で商行為によって生じた債務に関する法定利率は年6%とされていました。したがって、もし、被害者Xの請求を債務不履行安全配慮義務違反)構成にすると、(不法行為の損害賠償とは違って)Y信金債務不履行に基づく損害賠償金は商行為によって生じた債権で、利率は年6%になるのか?という論点です。

 そもそも、①株式会社ではない信用金庫が商行為をしているのか?②債務不履行による損害賠償は商行為か?などを判定しないと答えがでません。私自身もよく分らない論点です。その意味でも、本問を債務不履行安全配慮義務違反)構成で解くのは賢明ではなかったと思う、今日、この頃です。ちなみに、興味のある方は、法律学小辞典5で、「法定利率」、「商事法定利率」、「商行為」等を調べると、商事6%(民事+1%)だった理由が分ります。

 

追伸

  先日告知した対面授業の第1回の日程(9月4日)を、コロナ第7波が治まりそうにないので、10月9日に延期(変更)しました。新しく、次の2つの日になります。

  • 9月23日(金・祝)9:45-16:45、阿倍野市民学習センター第1会議室
  • 10月9日(日)9:45-16:45、阿倍野市民学習センター第2会議室

 ところで、再受験の方は、既に過去問の勉強をしているでしょうから、過去問集の構造と使い方の注意点について少し書きます。

 はっきり申し上げて、最近の第Ⅰ問(労働紛争事例)の過去問は難しいです。難しいとは、ア 設例に書かれている「Xの言い分」「Yの言い分」の量が増えてきた(その中から適切な要件事実を選び出すのが難しい)こと、イ 論点が2~3個絡み合っていて法的三段論法を複数組み合わせて使わなければならないこと、ウ 要件にあてはめる事実があいまいに書かれていてスッキリと当てはめて結論を出し難いことの3つの点から見てと言うことです。

 アおよびウの対策は慣れるしかないので、たくさん過去問を解くことです。問題はイの対策です。そもそも個別の単一論点の設例をどう解くかという解法のテクニックとその使い方の練習をしてから、論点が複合した過去問を解きにかからないと歯が立たないし、解説を読んでも、全体の収まりがしっくりと頭に入らないのではないかと考えています。

 結論を言うと、(巷間あるのかどうか知りませんが)単一論点ごとの設例の問題集を解きながら、単一論点ごとの設例の解き方に慣れた上で、複合論点の過去問に挑戦するという方法をとらないと、いつまでも空回りして、特に新問に対して、「できるぞ」とか「解けるぞ」とかいう自信が湧いてこないのではないか?と思う、今日、この頃です。

 また、第2問(倫理事例問題)については、抵触する法律の条文が大きく3つの塊になっているので、その3つのどれに当たるのかという目鼻をつけてから解くとい問題練習が必要だと思います。さらに、利益相反関係による受任の可否を判断する際に、その遠近というか濃淡というか軽重をどう評価するかという視点と複雑な事実関係の中にどのような利益相反関係が隠れているのか(本当は誰と誰が敵対しているのか)?を見抜く洞察力が必要になると考えていて、これらを身に付ける練習問題を作るというのは、相当に骨の折れる作業だなと思う、今日、この頃です。

 本年度の奥田塾では、以上のような問題意識で勉強材料を作成しています。基礎編は完成しましたが、応用編はまだ作成中です。

 忘れていましたが、LINEグループは既に作成してあり、早々に申し込まれた方もおられるので、出来上がった教材やブログの原稿MS-Word版などをLINEで提供していく予定です。受験勉強の進め方が分らずに不安な方には、LINEで相談にも乗ります。


 先程、大阪府社会保険労務士会Websiteを見ていたら、個別労働紛争解決制度の研修のビデオが載っていました。消される前に観たほうがいいですよ! 老婆心ながら。